シーサドタウン、寝子島シーサイドアウトレットの一角にて。
ビルひとつを階層ごとに、まるっと本で埋め尽くしている、とある大規模書店の中階層にて。
「さて、どうしたものか……」
その目の前に立ち並ぶのは、とある料理コーナー。
八神 修はその本棚の合間を歩きながら、今回の目的となる本をじっと眼を凝らしては探し歩いていた。
そして、歩くことしばらく。修が立ち止まった所は、立ち並ぶ『タイ料理』について触れられ、その調理法が描かれた初心者向けコーナーだった。
「タイ料理……」
修は自分の背丈よりも高くある本棚の前に立ち止まり思案する。
少し前――切っ掛けは、一緒に映画を見ていた修の想い人が口にした言葉ひとつ。
『修君に、タイ料理を教えてもらおうと思って』
彼女は、
修学旅行の思い出に買った調味料や香辛料も手つかずだと言っていた。
使わなければ、風味なども落ちてしまうから勿体ないというのもある。
だが、それ以上に『そのうち』も『いつか』も。
――その言葉で置かれるものは『いつまでも、永遠に来ないもの』だと、修は知っているから。
それを聞いた修は、さっそく自分から彼女に予定を尋ねつつ「一緒にタイ料理を作ってみないか」と誘いを掛けた。
彼女は、その大きくて澄んだ瞳を輝かせて喜んで応えてくれたけれども――しかし、そもそも修はタイ料理そのものを作った経験がない。
それでも。彼女にそう言ってもらえたならば、己を頼った言葉をくれるのであれば。
修本人に迷う余地は、一分たりとも存在しないのだ。
『己に出来ないことがあるならば、それが出来るようになるまで』
彼女が――大好きな『あおい』が頼ってくれるのであれば、それは至極当たり前のことなのだから。
だが、あおい――愛する人、
七夜 あおいに嘘はつけないから。
自分もタイ料理は作ったことはないけれども、と正直に伝えつつ。それでも、修は言葉を綴った。
『一緒に練習して、上手くなろう』と――。
「………………」
今まで、修はいつも彼女に教える側だった。それに、料理自体のハンデはあるものの、初めてにも近い対等というこの状況は、とても稀有なものであり。
それを察したあおいの目が、本当に嬉しそうに微笑んでくれていたのが、ずっと修の胸から離れなくて。
その嬉しさを胸に伴い、修学旅行で買ったグリーンカレーの作り方をメインにした、タイ料理のレシピと基本が載った本を数冊買って、修はその場を後にした。
本を買わなくても、タイ料理のレシピならネットで検索すれば無料でたくさんあふれ返ることだろう。しかし近年のネット情報というものは本当に玉石混交であるから、本を買った方が間違いが少ない。少なくとも、自分の知らない分野となれば尚のこと。
約束した日は明後日。少し本は読み込んでおきたい。
せっかくのあおいとの約束だから。教えて欲しいと頼まれたから。
それなら――多少失敗したとしても『美味しいね』と、二人で笑って食べられるものを作って素敵な思い出にしたいから。
袋に入れてもらった、購入した本を手にしながら考える。
――花を模した、色とりどりのアロマキャンドル。大切なあおいとの思い出として、飾ったままにしてあるけれども。本人を前にするならば、きっと食後のゆったりとした時間にでも使えれば、そちらの方が素敵な思い出になるに違いない。
考える事が山ほどあるけれども。
だが、それはどれもがきっと楽しいことで、今から本当に楽しみになってくる。
そうして、修は思わず浮かぶ微笑みを隠すことなく、約束の日への準備を始める事にした。
あおいとの一日が、とても幸せなものになるように、と。願いを込めて。
大変お久し振りでございます。冬眠と申します。
この度は、八神修様へのプライベートシナリオをお届けにあがりました。ご指名をいただきまして、誠に有難うございます。
それでは、さっそく以下より状況内容を説明させていただきます。
状況と、できること
【状況】
○シネマカフェ『クランク・イン』 第六幕にて、七夜あおいの告げた、
「そのうち修君に、タイ料理を教えてもらおうと思って」
この一言を元に、料理をするには桜花寮では香りがきついことになると、休日を利用して星ヶ丘の八神修様宅にて、タイ料理を一緒に作ることになりました。
【できること】
○シナリオ時間は、寝子島高校の休日である【11:00~20:30】の間となります。
行動におかれましては、特に制限はございません。
上記の時間内において、自由にアクションを掛けていただければ幸いです。
例:
・食材を買いに行ったり
・料理をしたり
・食べたり
・まったりしたり
・猫と絡んだり遊んだり
上記以外にも、思いの丈をご自由にアクションの形にしていただければ、可能な限り全力で応えさせていただきます。
【NPC】
○NPCと致しまして、七夜あおいが登場します。こちらは、ご自由にアクションをお掛けいただければ幸いです。
・料理当日、20:30になると、あおいは桜花寮へ帰ります。
【その他】
○NPCとのご関係について、事前にMSに知っておいて欲しいエピソードなどがございましたら、『そのリアクションの該当ページURL』をアクション内にてご記載いただきますと、大変嬉しく思われます。
それでは、記念に残るような一日となりますよう、全力を尽くさせていただきたく思われます。
素敵なアクションを、心よりお待ち申し上げております。