異世界アルカニア。
そこは剣と魔法とそして銃火器が支配する世界。
そのアルカニアの一地方、雪に包まれた山脈の麓にある村では毎年のこの時期に猛烈な吹雪が襲う。
息をするだけでも凍り付く様なその寒さだけが脅威ではない……来るのだ。凍てつく脅威という存在が。
それは氷の巨人であり、並の炎では溶かす事の出来ない強固な氷の装甲を持つ氷のゴーレム
『アイシクルゴレムス』。
毎年、大規模な討伐隊が編成されるのだが……今年のアイシクルゴレムスは一味違ったのである。
「うわぁぁあ!? く、くるなく……ぎゃぁぁあああああッ!」
「狼狽えるな! ここで俺達引いたら後ろには村があるんだぞッ! なんとかここで食い止めろッ!」
村から少し離れた位置に塹壕を作り、雪に穴を開けた様なその塹壕の中から上半身のみを出し数名の兵士風の男達がライフルを放っていた。
銃弾はアイシクルゴレムスを狙うのだが……特殊コーティングされた熱量弾ですら彼の装甲の前に役に立っていない様に見える。
何発撃たれ様ともアイシクルゴレムスは怯みもせずにゆっくりとだが確実に前進しているようであった。
塹壕に隠れ、連発式のライフルのマガジンを交換しながら隊長と呼ばれた男は頭上を飛び交う氷塊を見る。当たれば即死だろうと思われるその塊に恐怖の色が浮かぶ。
「た、隊長ッ! 部隊の損耗率が78%を超えましたっ! このままでは奴を抑えきれませんッ! 我々だけでも撤退するべきでは!?」
「だが……我らが下がれば村に危険が及ぶ……ここを死守する……どの道、ここまでの進行を許せば撤退すらさせてくれんだろうよ!」
塹壕から体を出した隊長は体にストックを押し当てライフルに備え付けられた二脚を展開するとスコープを覗いて射撃体勢に入る。
アイシクルゴレムスの頭部を狙って熱量弾を放つが……それは簡単に弾かれ、ダメージがあるようには見えない。
すっと腕を持ち上げたアイシクルゴレムスは巨大な氷塊を作り出すとそれを塹壕に向かって放り投げた。
猛然と向かってくる巨大な氷塊に彼は死を覚悟する。避ける様な暇はない。
「……ッ!!」
死を考え目を閉じて構える隊長と部下達であったが……氷塊はいつまでたっても落ちてこない。
目を開けるとそこには白い衣装とマントをなびかせる見知らぬ男と緑髪の少女が立っていたのである。彼らが見た事のないデザインの白スーツの男、
風雲児 轟は受け止めていた氷塊を横に放り投げる。
「よく耐えたな、お前ら! あとはこのストレイトと勇者ナディスに任せろ。行くぞ、ナディスッ!」
「はいっ、ししょー! まずは奴の足を止めますッ!」
低い姿勢で疾駆したナディスは放たれる氷塊を横っ飛びに避けると右手に炎を発生させ、数発の炎弾をアイシクルゴレムスの足元に放った。
燃え盛る炎が雪を溶かし、アイシクルゴレムスの足元を炎で覆う。消えない炎にたじろいだアイシクルゴレムスはついにその足を止める。
「よくやった、ナディスッ! 今度は俺の番だッ! スゥウトレイトォオオ、ナッコウゥウウッッ!」
動きの止まったアイシクルゴレムスに正面から突進した轟の右ストレートが撃ち込まれる。衝撃波と風を巻き起こしたその拳は熱量弾ですらびくともしなかったアイシクルゴレムスを揺らがせる。
拳を握り、戦闘態勢を崩さずに轟は言い放った。
「さあ、アイシクルゴレムス! ここからは俺達が相手だッ! 俺達がいる限りッ! ここから先には一歩も進ませないぜッ!」
轟達がアイシクルゴレムスと戦闘を開始した頃、村付近の別の場所では炎が巻き起こってた。
「ふははははーおぶつはぁあしょうどくなあぁぁのですぅううーーッ!」
雪でできた丘の上にて火炎放射器を背負い、向かってくる雪でできた熊スノーベア目掛けて火炎を放つのは水色髪の少女。
ちっぱいではあるが今は分厚い防寒着を着ている為にそれほど目立つ事はない。
彼女は笑いながら火炎を放射し、襲い来るスノーベア達を次々と溶かしていった。
「元気、ですねぇ……うう、寒いのはぁ、苦手……ですよぉ」
その傍らであまり元気がなさそうにしているのは金髪紅眼の女性ツクヨである。ちーあと同じく防寒着を着ているがそのボディのわがままさは隠せず、色気が漏れ出している。
彼女は普段であれば戦闘に嬉々として飛び込むのだが……彼女の弱点である寒さによりあまり積極的に動く気はないようだ。
ちーあが撃ち漏らしたスノーベアを袖口から伸ばす長い鎖によって薙ぎ払い、ちーあの放つ火炎の方へと吹っ飛ばしている。
時折かたかたと震えており、彼女にとってはスノーベアよりも寒さの方が脅威らしい。
一方、村に残った者もいる。
その少女の名はイヴァ。ちーあ達の中でも一番の常識人の少女であり、悪魔族であった。
彼女はお手製のコーンをたっぷりと入れたとろとろのクリームシチューを村人に振る舞っている所である。
「おお、これは美味しい……コーンの甘みとじゃがいもや他の野菜も豊富に入っている。いやぁ助かるよ」
「いえいえ、寒い時にはあったかい物を食べないとですからね。まだおかわりはあるのでどんどん食べてくださいね」
屈託のない彼女の笑顔とその料理に村人達は心身共に温められていた。
イヴァは椅子に座って自分の分を口に運びながら吹雪で荒れている窓の外を眺める。
その表情は非常に心配そうであった。
「ちーあの方は大丈夫ですかね……皆さんに任せた方は大丈夫だと思うんですけど……」
トラブルメーカーでもあるちーあがまた何かやらかすのではないかと心配しながらイヴァはそうならない事を祈りつつ、シチューをもう一口、口へと運ぶのであった。
ご依頼ありがとうございます。ウケッキです。
雪山に現れた氷の巨人……それに挑むはヒーローと勇者の師弟コンビ。
彼らの活躍にこうご期待!
概要
◆勝利条件
アイシクルゴレムスの撃破。
◆敗北条件
村へのアイシクルゴレムスの到達。
◆状況
アイシクルゴレムスは村の数百メートル先まで迫っており、非常に危険。
猛烈な吹雪の影響で体温が徐々に奪われる上に足元は深い積雪で行動阻害もある。
なお吹雪の影響で村人は避難できていない為、村の到達された時点で甚大な被害が出ると思われる。
◆予想される敵
・アイシクルゴレムス
:強力な吹雪を巻き起こす氷と雪の巨人。そのサイズは家屋四階分ほどと大きい。
強固な氷の装甲に包まれており衝撃ダメージは軽減されるがそれを上回るダメージを与えれば問題はない。
並の炎は通用しないが持続的な炎や魔法的な高火力の炎を苦手とする。
・スノーベア
:アイシクルゴレムスの吹雪と魔力に惹かれて現れた雪でできた熊。
表皮は硬くはないが、パワーがあり体力も高い。
雪でできているので炎に弱い特徴がある。
アクション
◆予想されるルート
どのルートを選んでも、風雲児さんにはナディスが同行可能です。
・アイシクルゴレムスとの決戦 危険度:非常にアブナイ
:強力な巨大な魔物『アイシクルゴレムス』との戦闘。
強力な吹雪と氷の氷塊による攻撃、巨大な体を生かした近接攻撃に注意。
足元が悪い為、何かしらの対策が必要。
・スノーベアを止める 危険度:そこそこアブナイ 参戦キャラ:ちーあ、ツクヨ
:アイシクルゴレムスに惹かれて現れた複数体のスノーベアの討伐を担当するルート。
数は多いが一体はそれほど強くない為、囲まれる事にさえ注意すれば対処は楽。
だが火炎放射器装備のちーあが所かまわず火炎放射してくるので巻き込まれない様に注意。
ツクヨも参戦しているが寒さで弱体化している為にあまり期待してはいけない。
・村人の防衛 危険度:全くアブナクない 参戦キャラ:イヴァ
:イヴァと共に村人と一緒に家で待つ。
危険度は無いが、村人からアイシクルゴレムスに関する有益な情報が聞ける可能性がある。
またイヴァの作った『コーンクリームシチュー』が食べられる。
NPC・装備
◆参戦する味方
・ナディス
:異世界アルカニア唯一の勇者。轟に弟子入りし一人前の勇者になる為、ヒーローを学んでいる。
小柄な女子ではあるがその身に秘めた力はやはり勇者だから故か非常に高い。
魔力で自身を強化したり、回復魔法も扱うほか高火力の炎魔法も使用可能。
だが火力を出すには動きを止め、長い詠唱時間が必要となる上にまだ習得したてで命中率が非常に悪い。
(的を狙った際、10回中9回外している)
・ちーあ
:後方支援を担当するちっぱい少女。異世界に皆さまを連れてくる張本人。異世界の扉の管理者。
割と楽観的で天然系のあほの子。なのでパーティーのトラブルメーカーだったりもする。
村でお留守番をしようとしていたがアイシクルゴレムスとは別口でスノーベアが向かってきている為に迎撃に出た。
ここに来る直前に見ていたアニメの影響で火炎放射器を使いたかったらしい。
・ツクヨ
:いつも露出の高い金髪紅眼のわがままボディの女性。
今回は流石に寒いとの事で防寒着着用。なお雪や寒さは苦手の模様で戦闘力が下がっている。
・イヴァ
:みんなのオカン、常識人の女性。若いのに面倒見が良いのでオカンと言われる謎仕様。
今回は村の防衛を担当。何かあった時に村人を守る為、彼らと共に家の中にいる。
◆支給されるちーあの装備
・フレイムナックル
炎を宿した篭手型の両手につける装備。炎を放ったり、腕に纏わせて相手を殴打する武器。
小盾が付いている為、それを用いた攻撃の受け流しも可能である。
エネルギーは循環式なのでエネルギーが尽きる事なく攻撃が可能だが、使用しすぎるとオーバーヒートを起こし爆発する。
・火炎放射器ちーあカスタム
村にあった火炎放射器を現地でちーあがカスタムした代物。
違法改造ともいえるカスタムが施されており、その火力は雪の塊を簡単に消失させるほど。
人ならば一瞬で炭と化す。
砲身根元にはちーあの筆跡で『おぶつはしょうどくだあなのです』と書いてある。