その男は寝子島のシーサイドタウンを見下ろす場所に浮かんでいた。
彼の眼下に広がるは人々の営み。何も知らず、何も危険を考えず……平和に暮らす人々の姿。
その姿を見て、彼は静かに……薄く笑った。
「そうか……この場所にいるのだな。我が悲願を成就する為に必要な少女……
野々 ののこ」
怪しげな風貌の男はゆっくりと高度を下げ、九夜山の三夜湖付近に降り立った。
辺りを見回した男は頂上展望台を見上げる。
「ほほう、この地にもこの様な建物があるのか。科学の発展とはいえ……通じるものはあるか」
彼の服装は魔導士の様なローブに怪しげな宝石がいくつも付いていた。一見してこの世界の者でない事は明白である。
「今、浮いてなかった……?」
「まさか。そんな手品じゃあるまいし」
「おや、これはちょうどいい。ふふ、喜ぶがいいそこの一般人よ。この地での最初の供物となるのだからな」
にやにや笑った男は彼をみて不思議そうな顔をしていた男性に近づいていく。
男性の連れの女性が怪訝な顔をしていたがローブ姿の彼……ディガードは気にしている様子はない。
ディガードは男の胸に手を当てるとそのまま一息に貫いた。赤い鮮血が迸り、連れの女性を真っ赤に染める。
「え……あ……」
「きゃぁぁぁあああああッ!」
「くくく、良い悲鳴だ。さあ……君はどんな像魔を生む?」
男から手を引き抜き、ディガードはふわりと空中に浮かび上がると手を広げて喜びの表情を浮かべた。その顔は狂気に満ちている。
がたがたと震えた胸を貫かれた男はその場に膝を折り、俯いて呻いている。連れの女性は彼を気遣う事もなく、腰を抜かして後ずさりしている。
「ぐぅうあ、アア゛アあ゛ァ゛あああああああああああああああああ!!」
「そうだ、欲望を開放しろッ! お前の奥底には何がある!? 死に瀕して……何を見る!!」
叫び声をあげた男の身体は醜く歪み、ゴキゴキと音を立て数メートルはあるだろうか、巨大な人型の獣へと姿を変える。
その顔は異形でどことなく人の顔の印象を残しているがその瞳にはもう狂気の色しか映っていなかった。
男だった異形の獣は連れの女性を見ると彼女ににじり寄る。口から涎を垂らし、息も荒く近寄っていく彼の姿は獲物を前にした獣そのものであった。
「や、やめてっ……こな――」
女性の声はそこで途切れる。なぜなら異形の獣は彼女を押し倒し、そのまま噛み砕いたからであった。
バリバリとかつての連れを喰らい、その血に濡れる獣を眼下に見てディガードは声をあげて笑い出した。心底楽しそうに。
「くっくっく、あーっはっはっは! いいぞ、いい像魔が生まれた。この地での検証はまだまだ必要だがまずまずといえよう。あちら側で我の邪魔をした者達もこれで動き出すだろう。さあ、我が悲願の為に働いてくれ、憐れな……像魔よ」
そういうと異形の獣を残し、ディガードの姿は掻き消える様に消失した。
◆
「ということで、今回は九夜山の三夜湖に出没する異形の怪物が相手なのですよっ! 巧妙に隠れているようですけどこのちーあの目からは逃れられないのです!」
水色髪の少女ちーあが張り切ってホワイトボードに作戦会議とペンを使って書き込んでいる。彼女はこの世界の住人ではない。
数多にあるといわれる異世界の住人でそれら異世界を監視し、その安全を守る存在なのである。
背伸びして一生懸命にホワイトボードに注意事項などを書き込んでいる姿からはとてもそうは見えないが。
「ねえ、ちーあちゃん。そいつってどんな奴なの?」
椅子に座っていた背丈の低い巨乳の少女がそう聞く。彼女は
白 真白。以前にもちーあに力を貸した事がある少女だった。
真白にそう聞かれたちーあはあらかじめ印刷してあったのだろう異形の獣の姿を記した紙を取り出す。
「事前の調査によると、身の丈数メートルを誇る巨大な獣で人を頭からばりばりと食べちゃうらしいのです! 怖いのです! 恐ろしいのですよっ! それと……わぷっ」
ちーあから紙を奪い取った黒髪ツインテールの少女イザナが続きを読み上げる。その間、ちーあは手で頭を押さえられ、ばたばたともがく。なお彼女もちーあと同類の存在である。
「全く、怖いとか恐ろしいとかじゃわかんないって。えーと、巨腕による怪力、俊敏な移動力……あーでかいのに速いの、これ面倒そうな相手だ」
遠い眼になったイザナから紙を取り返したちーあはその場に集まっているメンバーに改めて頼んだ。
「お願いするのです、このままでは寝子島が大変なことになってしまうのですよ! みんなで力を合わせてやっつけるのです!」
「ツクヨはァ、たーーっぷり殺せれば……なんでもいいんですけどねぇー」
「もうっツクヨは黙るのです!」
金髪で巨乳な紅眼の女性、ツクヨは紅い刀を自らの血で顕現させその刃を妖しい瞳で見る。狂気にどっぷり浸かっていそうな彼女ではあるがこれでも彼女もまた、ちーあと同類の存在である。
それぞれが九夜山に向かう中、イザナに同行した真白は彼女にツクヨの事を聞いた。
「ねえ、ツクヨっていつもああなの?」
「あー、普段からあんなもん。殺したりないからって雑魚の群れに突進していくのだって日常茶飯事だもの。付いていく方の身にもなってほしいわー。ま、それに付いてくるアンタも物好きだけど」
「え? もの好きかな?」
「そうに決まってるわ。じゃなきゃこんな危ない戦闘に一緒に行くなんて言わない」
真白の方を見ずに言うイザナに対し、真白は歩きながら喋る。
「まあ、そういう所もあるかもしれないけど……一番は誰かが困ってて、それを何とかできるなら何とかしたいって所かな」
「そういうのをもの好きっていうのよ。どいつもこいつも全く、物もの好きだらけなんだから」
そういうイザナは過去に自身を助けてくれた者達に思いを馳せているのだった。
彼らのおかげでここにいる、誰かを傷付けるのではなく助ける側に。
「置いてくよーっ! はやくはやくっ」
「あーもうっ、アンタなんでそんなに足速いのよっ! そんな重り付いてる癖に!」
一瞬、自身の小ぶりな胸と真白の豊かに揺れるたわわな双丘を見比べ、悲しい瞳をしたイザナは顔をぶんぶんと振って気を取り直すと走り出すのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
今回は寝子島に迫るディガードの魔の手が危険なシナリオです!
これから彼は何を目的に何をするのでしょうか。
寝子島の未来は、明日は、皆様に掛かっております!
概要
現在、異形の獣『メルズ』は九夜山の三夜湖からシーサイドタウン方面へ向け真直ぐに下山中です。
このままではシーサイドタウンが異形の獣にて被害を被る事が考えられます。
多くの人物が目撃するであろう事態を避ける為、現在はちーあの不可視の結界が張られていますが
長くは持ちません。結界の外に出て、この島のフツウが壊れる前に早急な討伐をお願いします。
またメルズを中心として揺らめく影の様な魔物が多数出現していますのでご注意ください。
※白 真白さん、ガイド登場ありがとうございました。
ガイドはあくまで一例ですので、これ以外のアクションもお待ちしております。
アクション
※以下の情報は知っている事でも知らないという事でもOKです。
また、このシナリオではろっこんが強力に描写される場合があります。
◆今回の目的◆
成功条件:異形の獣『メルズ』の討伐。
失敗条件:メルズがシーサイドタウンへ到達。
◆場所◆
九夜山の三夜湖付近~九夜山の森。
◆敵情報◆
異形の獣『メルズ』
:数メートルはある様な巨体を誇る異形の人型の魔物。顔は獣同然だがどことなく人の面影がある。
大木をへし折る程の怪力と木々を軽々と超える程の跳躍力を持つ。
背中に二つの超硬質の角状の器官があり、これが破壊されない限り周囲の者の生命力を徐々に奪う。
メルズに近いほどその影響を受ける。
黒き揺らめく影『シャドウ』
:黒いゆらゆらした影。
腕を伸ばしたり武器状に変化させた腕で攻撃してくる他、女性とみるや集団で取り囲み拘束する。
拘束された者は徐々に生気を吸われ、そのまま彼らの玩具となり生かさず殺さずのまま、もてあそばれる。
ディガード
:空から現れた異世界『マシナリア』の人物。何らかの目論見があって野々 ののこを狙っている模様。
薄く笑っている青年の姿をしているがその他の情報は一切不明。
◆予想ルート◆
※あくまで一例ですのでその他のアクションもお待ちしております。
1:メルズを迎え撃つ。
危険度:割とアブナイ
異形の獣『メルズ』を侵攻ルート上で待ち伏せし迎撃します。
激しい戦闘が予測されます。なお、最初の待ち伏せ場所は九夜山の森です。
辺りには背の高い木々が多いので障害物に注意です。
この戦闘にはイザナが同行します。
2:ちーあの『誘因装置』でシャドウを引き付ける。
危険度:少しアブナイ
1のルートの部隊がメルズ討伐に集中できるように周辺に湧き出している
シャドウを装置で引き付け、討伐します。複数体のシャドウと戦闘になりますので
女性の方はシャドウの特性上、お気をつけください。
場所は九夜山の三夜湖です。
この戦闘にはちーあが同行します。
3:謎の人物の目撃談を追う。
危険度:非常にアブナイ
九夜山のふもとにてローブ姿の謎の人物の目撃談があります。
メルズ出現の時期と一致する為、何らかの関係性があるかもしれません。
何が起きるか不明ですので細心の注意を払ってください。
このルートにはツクヨが同行します。
◆登場人物◆
ちーあ
:水色髪で絶壁のちびろり少女。数多ある異世界の監視者兼守護者。
サポートアイテムの作成が得意。
ツクヨ
:金髪紅眼のわがままボディの女性。極度の戦闘狂であり、常に狂気の笑みを絶やさない。一応これでも味方である。
花魁の様な露出の高い着物をはだけさせているがなぜか大事な所は見えそうで見えない。
イザナ
:黒髪ツインテールの女性。雷の力を使いこなす。体の線が出るぴったりした黒色の服を着ている。
小ぶり双丘が悩みの種。漆黒色の巨大な両腕を持つがサイズの変更は自由で縮小も可能。
◆サポートアイテム◆
※一人ひとつだけ所持可能
大鬼のかなぼー
:ちーあ印の巨大な金棒。力のない者でも振るえる様にとても軽いが打撃力は巨岩を簡単に砕く程。
怪しげなボタンがついており、押すと所持者の能力、見た目を判断し何かが起きる。
リフレクトシールド
:イザナ製のエネルギー反転シールド。あらゆる物理ダメージを反射する大盾。
だが扱いが難しく攻撃が当たる瞬間に展開しないと反射できず、反射に失敗した場合は
攻撃を軽減するだけの普通のエネルギーの盾である。
ゲージが存在しており、反射は大きくエネルギーを消耗する。エネルギーは時間経過で回復しゲージがない時は
普通の盾としても使用できない。そしてそこそこ重い。
撃ち出しの刀
:鞘から抜く際に鞘に付いている引き金を引く事で火薬を爆発させ、神速の抜刀を可能とする刀。イザナ製。
刀自体には封印というシールの張られた引き金が付いており、それを破って引く事で一時的に刃の切れ味を増す事が可能。
だがあまりにも早すぎる為に普通に扱えば体がきりもみ回転しながら吹き飛ばされる危険な代物。当然、肉体へのダメージも大きい。
一応、抜く度に鞘へ戻し鞘の引き金のみを使用する事で常人でも扱う事は可能である。
恵みの杖
:ちーあ印の杖。女性にしか扱えず、装備者が巨乳、貧乳かで効果が変わる。
巨乳なら範囲回復魔法が使用可能。貧乳であるなら単体への強力な回復魔法が使用可能。
なお、回復後は使用者の全身に回復させた対象のダメージと同程度の耐えがたい快感が走る。
男の娘でも使用は可能。
ちなみに無理やり男性が使うと自身に強力な雷が落ち重傷を負う。