「……あん?」
未だうだるような暑さの残る、8月末の寝子島です。
額にだらだら滴る汗を拭いながら、
如月 庚はかけられた声へと振り向きました。
「なんだって?」
「いえそのあのうー。私のおウチは、そこの喫茶店なんです。オープンしたばかりでお客さまが少ないのです。良かったら寄っていきませんか?」
わたわたと落ち着かない様子の、きっと庚と同じ年頃であろう女の子でした。
女の子は白に近いプラチナブロンドの髪を腰まで伸ばしていて、顔立ちもちょっぴり日本人とは違って見えます。
清潔そうな白いブラウスとフレアスカートの上には、どこかで見たようなキャラクターのアップリケがついたエプロンを身に着けておりました。
「にーさんの淹れるコーヒーは美味しいのです。冷たいドリンクもあります。映画も見られますわよ」
「喫茶店で? 映画が見れんのか」
女の子の指差したところを見ると、確かにそこは喫茶店です。看板には、
シネマカフェ『クランク・イン』とありました。
なかなかこじゃれた店構えで、壁には古今東西の映画俳優をデフォルメしたたくさんの似顔絵が描かれています。
「ほう。趣味は悪くねえ」
ひとまず店内も見てみようかと、開けっ放しの扉からひょいと中を覗いてみますと、
「……ん。なんだ客か。いらっしゃい」
これまた庚と同い年くらいの男の子が、カウンターの向こうから、ちらとも笑わず無表情に言いました。
「適当な席に座ってくれ。注文が決まったら、妹に言うといい」
短い黒髪の少年で、いかにも寝子島生まれの日本人といった面立ちです。フォーマルな印象の薄手のジャケットの上には、やはりエプロンを着ています。
「にーさん、にーさん。やっぱり私にはキャクヒキは向いていないと思うのです。キンチョーで心臓がバクバクでバクハツしそーですわ」
「お前の淹れたコーヒーを客に飲ませるくらいなら、泥水でもすくってきたほうがマシだ。そのくらい役に立ってくれ、ポンコツな妹よ」
「にーさんはいけずです……」
ふたりはあまり似ていませんけれど、どうやらこちらが、女の子のお兄さんであるようです。
妹さんへの物言いはなんだか辛辣ですけれど、少し細めた瞳を見ると、きっと本気ではないのでしょう。たぶん。
「ふむン」
庚が店内を見回すと、こじんまりとしたお店の中にはいくつかのテーブル席と、カウンター席がありました。
壁には新旧さまざまな映画ポスターが飾られ、マガジンラックには映画関連の雑誌やパンフレットなどがぎっしり詰まっています。
一番の特徴は、奥の壁に掲げられた、大きな大きなスクリーン。店内はやや薄暗く、大画面のスクリーンでは今まさに、ド派手なアクションとCGがウリのヒーロー映画が上映中です。
「……『ナメンニャーズ』かよ。悪くねえ」
どこを見ても映画づくし。よほど好きなのだろうと感じられる、こだわりのお店でありました。
なにやら変わった兄妹が店員の、映画が見られる喫茶店。
庚は回れ右して、炎天下の街中へ舞い戻ることもできるでしょう。
あるいはここでゆるりと映画を眺めつつ、しばらく涼んでいくこともできるでしょう。
「さて。どうすっか?」
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
如月 庚さん、ガイドへご登場いただきありがとうございました!
(ご参加いただける場合は、ガイドのイメージに関わらず、自由なアクションでどうぞ!)
このシナリオの概要
シネマカフェ『クランク・イン』という喫茶店が、シーサイドタウンの一角にオープンしました。
その名のとおりに映画づくしのお店で、店内のスクリーンでは常になにかしらの映画が上映されています。
上映される映画は、洋画に邦画、比較的新しい映画に古めの映画も、名作からB級映画までいろいろです。
映画のポスターやパンフレット、雑誌、その他映画関連グッズなども豊富に取り揃えられています。
お店では、大画面で映画を見ながらコーヒーや軽食をいただいたり、
通常の喫茶店のように自由に過ごしていただくことができます。
店内では、普通におしゃべりしていただいて構いません。あくまで、『映画も見られる喫茶店』なので。
店員を務めているのは、キッチン担当の兄とフロア担当の妹の似てない兄妹。
どうやらアルバイト店員のようですけれど、ふたりで店を切り盛りしています。
ご注文はお気軽にどうぞ。コーヒーはなかなかのお味のようですよ。
また、話しかければおしゃべりの相手にもなってくれるでしょう。
※なお、墨谷はカフェについての専門的な知識などはありません。
あくまでイメージや雰囲気をお楽しみいただけましたら……!
アクションでできること
カフェでできることなら、なんでもアクションかけていただいて構いません。
なにか注文したら、あとは自由にお過ごしください。
メニューは、一般的な喫茶店にあるものなら大抵あります。
なお、スクリーンで上映されている映画を見るほか、
お好きな映画をチョイスして、1~2人用の個室で鑑賞することもできます。
ゆったりソファでくつろぎながらお楽しみください。
また、希望者はアルバイトとして働くことも可能です。
キッチンかフロアをお選びください。
<今回の上映作品>
●『ナメンニャーズ』
大人気ヒーローが終結するアクション映画シリーズの第一作目。
●『タイタニャック』
沈みゆく豪華客船で繰り広げられる、感動のラブストーリー。
●『ネコリアン』
地球外生物が宇宙船の中で暴れ回る、SFホラーの金字塔。
※上映時間はお店の前に掲示されているので、合わせて来店すれば最初から鑑賞できます。
※個室を利用する方は、お好きな映画を指定してください。
NPCについて
○嬉野 七海
キッチン担当の兄。無表情で不愛想、めんどくさがりだが、調理の腕は確か。
○嬉野 エマ
フロア担当の妹。不器用、ドジ、要領悪しなポンコツながら、明るく元気で愛想良し。
○胡乱路 秘子
たまたま見かけて来店した様子。サンドイッチをいただきながらタイタニャックを見てます。
その他のNPCも、登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。
以上になります。
それでは、ご参加をお待ちしております~!