寝子島駅を過ぎて寝子島街道を渡る。
ジリジリと肌を焼く太陽の眩しさと熱に夏の海と同じ鮮やかに明るい水色の瞳を細め、
海月 珊瑚は跳ねるような足取りを早めた。
防風林の向こう、太陽の煌きを弾ませる海が見える。
夏休み真っ只中の海岸、今日もきっと大勢の海水浴客が訪れるのだろう。
「忙しくなりそうなのだわ!」
薄紅から淡青へと色を変える長い髪を海風に揺らし、珊瑚は口元を綻ばせる。
海を眺めることが好きで、よく一人で海に来ることが多い珊瑚だけれど、今日はそれが目的ではない。
蝉の声が波音と共に響く防風林の小路を行き、砂浜の端にある海の家の前に立つ。
白い壁に新しいトタン屋根、縁側には一昔前の雰囲気を醸し出す首振り扇風機にゴザ、それから薄い座布団。『氷』の幟が揺れる軒先には涼し気な簾もつり下げられている。夏の花の造花に始まり売り物のうちわまでが華やかに飾り付けられた簾を瞳に映し、珊瑚は笑んだ。
みんなで頑張って修理したり掃除したり飾り付けたりしたおかげで、お化け屋敷のようだった廃屋は、きらきらした夏の海にぴったりの『海の家』となっている。
「おはようございますなのだわー!」
キュートな猫のイラストが描きこまれた『海の家 みなとねこ』の看板を見上げつつ、店内へと声を掛ける。
「海月さん、おはよう」
畳敷きの小上がりに並ぶ長机を布巾でひとつひとつ丁寧に拭いて回っていた
恵御納 夏朝が、焦げ茶色のたれ目を和らげた。
夏の始まりに『みなとねこ』の開店準備を手伝い、夏本番の今またバイト仲間となった夏朝に珊瑚は華やかに笑いかける。
「夏朝ちゃん、一緒にがんばりましょうなのだわ!」
「うん、がんばろう」
「……あら?」
小上がりの隅には、タオルケットと黒い仔猫をお腹に掛けて気持ちよさそうに眠っている、おかっぱ頭の幼女がひとり。
「こんちゃんはおねむかしら?」
「ううん、……夜に肝試しするから今のうちに寝ておくんだって。すごく張り切ってたよ」
「肝試し?」
「海岸に蒼い髪の少年の幽霊が現れて、遊ぼうって誘って来る、って楽しそうに教えてくれたけど……」
少女たちの声を聞きつけ、小上がりの反対側に位置する厨房のカウンターにひょこり、凡庸な顔つきの男と十代前半ほどの少女の顔が覗いた。
「おはようございますなのだわ、夕さん、日暮さん!」
「おはようさん。ええ天気やねえ、今日もお客さんようさん来てくれはるとええね」
「おはようございます、珊瑚さん」
かき氷に焼きそばにラーメン、冷や麦に焼きトウモロコシにロコモコ丼。お好み焼きに冷やし中華に、塩レモンスカッシュ。先にみんなで考えたメニューの下ごしらえに取り掛かる雇われ店長とその家族に微笑み、珊瑚は張り切って腕まくりをする。
「シャワー室と温泉のお掃除、してくるのだわ!」
水着着用の混浴温泉には、日々何故か猫たちが集まってくる。日陰で涼む猫に始まり、ひがな一日うたた寝する猫、『みなとねこ』で販売されている餌をねだる猫、果ては船のかたちした湯舟でちゃぷちゃぷ泳いで遊ぶ猫。
温泉を楽しむ猫たちは見ていて楽しいものの、湯舟には人間も入る。猫毛を除くための掃除は欠かせないのだ。
夏の一日の始め、海の家『みなとねこ』の雇われ店長はのんびりと笑う。
「休憩時間は好きにしたってくれてかまへんさかい。ほな皆さん、今日も一日、よろしゅうに」
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回は、夏の海の一日をお届けに参りました。
ガイドは海月 珊瑚さんと恵御納 夏朝さんにご登場いただきました。ありがとうございます!
もしもご参加頂けますときは、ガイドに関わらずどうぞご自由にアクションをお書きください。
ということで真夏の海です。夏休みです!
みなさまが夏の海(地図L-3付近)で過ごす風景を描かせて頂けましたらと思っております。
(以前書かせて頂いた『海の家 みなとねこ』がガイドに出ておりますが、読まなくて全然大丈夫ですー。どうぞどなたさまもお気軽にご参加ください!)
友達とわあわあ泳いだり、海の家やパラソルの下なんかで休憩したりとか。夜の砂浜で花火してみたりとか。もちろん、海の家『みなとねこ』でのバイトも歓迎です。
夏の海辺でのみなさまの一日、よろしければ描かせてください。
いくつか場面を用意してみました。ひとつかふたつ、場面を選んでアクションをお書きください。
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■海の家『みなとねこ』
この夏リニューアルオープンした温泉つきの海の家です。
泳ぎ疲れた身体を一休みさせたり、食事したり。パラソルや浮き輪の貸し出しもやっています。
水圧が低くて温いお湯しか出ないシャワー個室で着替えられます。何故だか猫がたくさん居る混浴温泉に水着で入ったりも。
お客さんとして訪れたり、バイト店員として働いたり、どちらでもオッケーです。
■昼の海
天気予報によるとぴっかぴかの晴れ。海水浴日和の一日です。
波は穏やか、『みなとねこ』以外にも海の家や屋台も出ている様子。
きらきらの海で遊んだり、持ち寄った食材を使って海岸でバーベキューしたり、夏の海をめいっぱいお楽しみください。
夕暮れの海を眺めながら、ひとりや誰かとのんびり黄昏てみたりなんかも良さそうです。
■夜の海
月の出る頃、波打ち際にぽつりとひとり蒼い髪の少年が現れ、通りがかる人に、
「あそぼう」
と声を掛ける、そういう噂話が最近流れ始めました。
いいよ、と言うと海の中に引きずり込まれ、いやだ、というと寂しそうな顔は見せるものの何もせずに帰してくれるそうです。
ただ、少年に手を引かれ海中に引きずり込まれても不思議と水中で息が出来た、そうして月の海の底にとぐろを巻いて眠る巨大な蛟を見た、その後はまた遊んでねと無事に元の場所に帰してくれた、と、そういう噂もあるようですが……。
幽霊(?)の少年に怯えるも良し、少年に連れられて月夜の海中散歩を楽しむも良し、です。
■その他
夏の海辺で出来そうなことでしたらなんでも!
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みなさまのアクションによりましては、以下のNPCが登場することもあります。
◇日暮……海の家『みなとねこ』の雇われ店長の青年。厨房でひたすら働いています。
◇夕……外見年齢十四歳ほどの少女。海の家『みなとねこ』のお手伝い。休憩時間に新しい水着で海水浴するのを楽しみにしているようです。
◇こん……外見年齢四歳ほどの幼女。怪談大好き。夕方までお昼寝しています。夜になると起きだし、海岸に出る幽霊少年探しに出かけます。
◇海の家や砂浜、夜の海辺にいそうなXイラストのNPC……今回は特別に、Xキャラクターをリアクションに登場させることができます。(通常のシナリオでは登場できません)
ご希望の場合は、リアクション登場時に必要な情報をアクションにお書きください。(口調や性格、行動、その他参照にできるようなシナリオのURL等もありましたらお書き添えいただけますと助かります)
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みなさまのご参加、心よりお待ちしております。