自分は確か、教室で授業を受けていた筈だった。
「あれぇ? ここは一体……」
突然起きた異変に、
高梨 彩葉は口を丸くして周囲の様子に目を這わせているしかなかった。混乱しながらも状況を把握する。自分が腰を降ろしているのは大きなベッド、それからすぐ隣には細やかな金細工のランプ。奥の窓にはステンドガラスが飾られて、チェストやドレッサーなどのアンティークが居並んでいた。
改めて確認するが、自分はごく当たり前の平日に、自分の教室の自分の席に座り、ペンを握って教師の言うことをノートに書き写していた筈なのだ。
ならば、ここは一体どこだというのだろう。決して教室ではない。古めかしくも品のある洋館の寝室のようであった。シャンデリアの照明が割れていなくて、蜘蛛の巣などが目立ってさえなければ、大富豪の住むお屋敷と呼ぶにふさわしい華やかさだ。
「……俺だけじゃないのか?」
背後からの声に振り向けば、同じ学年の
市橋 誉がいた。自分と同じく制服を着ていると言うということは、先程まで自分と同じように授業を受けていたのだろうか。
「訳が分からない。ここは一体どこなんだろうな」
「うーん、分かんない。でも、なんだか寂れたところね~」
誉は肩を竦めつつ、額に浮き出た汗をぬぐった。二人とも『ろっこん』による不可思議な現象になれてはいるものの、突如置かれたこの状況には不安を感じずにはいられない。
それでも、彩葉はベッドから立ち上がり、自分以外にも同じ境遇の人がいたことにほっと胸を撫で下ろした。
「とにかく、ここを抜け出さないと。脱出の方法を探そう」
「んっ? ……んんっ!?」
しかし、安堵も束の間、彩葉の顔が一気に蒼白した。
「ん、どうかしたのか?」
その表情の変化に、誉は首を傾げつつ尋ねる。彩葉は目を見開いて、誉の背後にある洋館の廊下へと恐る恐る指を突き立てた。
しかし、いざ誉が振り返った時には、狐にでも化かされたかのように何もなくなっていた。誉は見ていなかったようだ。けれども確かにそこに存在した『何か』は廊下の壁から現れ、かと思えば再び壁の中をすり抜けて消えていった。
何かを見間違えただけならいい。けれども、まさか……。彩葉は本能的に息をひそめて、たじろぎつつそっと呟いた。
「今、なにかそこに……」
初めまして、本シナリオを担当させて頂くtsuyosiと申します。今回は、皆様がごく当たり前に平日の授業を受けていたそんな最中、まるで神隠しにでもあったかのように送られてしまった廃墟の屋敷から脱出するシナリオになります。
・今回の舞台はマップのj-4に佇む、何十年も前に住み手のいなくなった屋敷になります。
・屋敷は二階建てで、地下室が存在します。
一階には玄関、客室、食堂、台所、入浴所。
二階には寝室、書斎、衣装部屋が存在し、二階と一階は大階段でつながれています。
また、地下室には一階の台所にある地下への階段から向かうことが出来ます。
中は真っ暗で、レンガ造りで湿気がこもり、駅のホームほどの長方形の空間が広がっています。
・部屋の中や、部屋と部屋をつなぐ長い廊下は昼間だというのにうす暗く、
その壁際には欠けた骨とう品などが飾られたままになっています。
・キャラクターたちは二階のいずれかの部屋からスタートします。
送られた人物は、いずれも同時刻に寝子高のいずれかの教室で授業を受けていた生徒のようです。
授業中であったので、彼らの持ち物はペン、ノートなどしか無いかと思われます。
・屋敷の一階にある、唯一の出入り口である扉には鍵がかかっており、何故だか破壊することは出来ません。
窓や天井なども同様で、破壊することは出来ません。
・あからさまに電波の通りが悪いことや、
キャラクターたちが屋敷に送られてきた現象も含めて神魂の影響かと思われます。
・屋敷の探索の最中、どこからともなく「幽霊」が出現することがあります。
「幽霊」はシーツを被ったような姿をしていて宙に浮いており、
この「幽霊」に触れられると再び二階の元居た部屋に戻されてしまいますが、
「幽霊」自体には武器による攻撃が通用するようです。
怯んだ「幽霊」はそのままかき消えてしまいますが、一定時間が経過した後、再び出現します。
・屋敷のどこかに、幽霊によって隠された「鍵」が存在する模様です。
鍵を入手し、誰かが屋敷の玄関にある扉を開くことで全員の脱出が成功となります。
・脱出の後、キャラクターたちは再び授業を受けていた教室に戻ります。
どういうわけか、屋敷で過ごしたであろう時間は経過していません。