月明かりに照らされた白い寝子ヶ浜海岸。赤いオールバックの
佐々 藤寿が砂を蹴散らし、全力の走りを見せていた。黒いジャージが軽快な音を立てる。
間もなく速度が落ちてきた。海岸を横断した藤寿は隣接する海浜公園に立ち寄った。
この時間帯、公園を訪れる者はほとんどいない。ましてや子供の姿など、あるはずがなかった。
「マ、マジかよ? 俺の目がおかしい訳じゃねぇよな」
藤寿は立ち止まった。
数メートル先の道に小学生くらいの子供が両膝を抱えて座っていたのだ。じっと下を向いていて、こちらに気付いていない様子だった。
「無視だな」
呟いて踵を返した。顔だけを向けると、子供は同じ姿勢でいた。
藤寿は鋭い眼付きのまま、深々と息を吐いた。お人好しにも程があんだろ、と舌打ち混じりに呟いた。
「おい、そこのガキ。こんなところで何してんだ」
「遊んでくれる人がいないの」
子供は顔を上げて黒目勝ちな瞳で見つめてきた。
藤寿は不機嫌な顔で横を向く。
「大学生の俺にヒマはねぇ~んだよ」
その言葉に子供は泣きそうになる。
藤寿は言葉を続けた。
「ヒマがなけりゃ、作ればいい」
「え、それって」
「……なにして遊ぶんだ? さっさと決めろ」
子供は笑顔で立ち上がると、辺りを見回すようにした。
「このお兄ちゃんが、ボクたちと遊んでくれるってさ!」
「おいおい、他にもいるのかよ」
どこに隠れていたのか。たくさんの子供達が二人の元に押し寄せてきた。
「あたしはオママゴトがいい」
「俺はかけっこ!」
「楽しい話を聞かせて」
口々に希望を言い募る。瞬く間に言葉は混ざり合って内容が聞き取れなくなった。
「ちょ、ちょっと待てガキども!」
藤寿が怒鳴ると、途端に声が止まった。全員が沈んだ顔になる。
「俺一人じゃ、どうにもならねぇ~よ。妹に頼んで人数を集めてやる。それまで待ってろ」
「じゃあ、今日みたいに月がきれいな時に会おうよ。ここでみんなと一緒に待ってるから。絶対にきてね。忘れちゃイヤだよ」
最初の子供が代表で言った。
「この俺が忘れるかよ。お前等こそ、消えずに待ってろよ」
藤寿は子供の頭を乱暴に撫でた。じゃあな、と声を掛けて公園を出る。
人が疎らな通りを歩いていて、ふと思い出したように立ち止まる。
自分の手のひらを不思議そうに見つめた。
「あのガキ、身体が透けてるくせに触れんのかよ」
※皆さんが公園に訪れた理由は、いろいろだと思います。
妹さんから話を聞いた。学校で噂が広まっていて足を運んでみた。または子供達と波長が合ったのか。声を耳にして訪れた。なんでも構いません。あなたらしい理由をアクションに書き添えてください。
神魂の影響を多大に受ける寝子島ならではの物語になります。
今回の目的は「子供と遊ぶ」ことです。遊んであげる側が心から楽しめば、その想いはきっと子供にも伝わるでしょう。
では、たくさんいる子供達に共通する特徴と遊び場所を挙げておきます。アクションの参考にしてください。
子供の特徴
一:自分を幽霊だとは思っていない。生前の記憶はぼんやりとしている。
二:物に触れることは出来ても、自らの力で動かすことは出来ない。
三:今回、参加した者達には子供が見える。
波長の合わない部外者には姿どころか、声も聞こえない。
四:遊びに満足すると消えていく。
遊び場所
一:寝子ヶ浜海浜公園
二:寝子ヶ浜海岸
三:その他(近場)
シナリオガイドで遊び方について少し書いてありますが、聞き届けないといけない訳ではありません。
子供達はずっと存在を無視されてきました。届かない声で必死に訴えていました。その過程で願いの一端が叶ったのです。
あなたと遊ぶことが子供達の望みなのです。
綺麗な月の見える頃、童心に返ってみるのもいいかもしれませんね。