おばけ役、超絶募集中!
ある大型遊園地のお化け屋敷前に、そんな看板が立っていた。
「あーなんだよ突然の夏日って、春なのに腐れ熱ぃじゃねえか溶け死ぬわ……ん、なんだこの看板」
ひょんなことから遊園地に遊びに来ていた
屍 骸が看板に顔を寄せると、見知らぬ男性がぐっと手を握ってきた。
「やってくださいますか!? よく見れば実に素晴らしい顔立ちとボディバランス! 才能ありますよ! 才能!」
「えっ、いや、俺別にそういうんじゃ……」
引いた骸に、男性は涙ながらに語りはじめた。
「にわかに信じがたいことなのですが」
お化け屋敷担当者を名乗る男性の話を要約すると。
まず、お化け屋敷にマジモンのお化けが出た。青白くて丸っこくて足が無いかわりに尾っぽのあたりがとんがってて、のっぺりした顔にベロを出してて両手を翳してオバケダゾーって言いながらでてくる、古今東西誰が見ても文句なしのオバケであった。
オバケは出てきた途端にこう述べたそうだ。
『われはオバケダゾー。このお化け屋敷は生ぬるいゾー。もっとびっくりどっきりさせるお化け屋敷を作るんだゾー! さもないと……!』
バーッと両手を振り上げた途端、スタッフ一同頭痛腹痛情緒不安定悲しくないのに涙が出ちゃうという恐ろしい奇病にかかってしまったのだ。
このままではパークの危機! どころかそこら一帯のお客さんまで同じ奇病にかけられたら日本がヤバい。フツウがヤバい!
『一日だけ様子をみてやるゾー。びっくりどっきりなお化け屋敷を作るんだゾー!』
……と、いうことらしい。
「なんとか! なんとかお力になって頂けませんか!」
「力つっても……あー……」
すがりつかれ、骸は目を泳がせた。
こうなれば、お友達連中に声をかけるしかあるまいて。
と、いうことで。
おばけ屋敷のおばけになろう!
工夫を凝らして、もしくはこっそりろっこん能力を使って、来るお客さんを驚かせよう。
世のため人のためフツウな世界を守るため、しかたなくほんっとしかたなく、お客さんをびっくりさせてやるんだゾー!
おばけ屋敷のおばけになろう! な、シナリオでございます。
お化けっぽいメイクをしたり、こわーい衣装を着込んだり、はたまたろっこん能力を使って怪奇現象を起こしたり。
フツウの世界をまもるため、しかたなくほんっとに仕方なく、お客さんを恐怖のどんぞこに落としてやりましょうぞ!
細かいお話としましては、お手伝いするのは一日だけ。
お化け屋敷はウォークスルータイプ(自力で歩いて行くやつ)で、恐すぎたら途中でリタイアできる出口がいくつもついています。要するにながーいお化け屋敷ですね。
オバケダゾーさんはどうやってるのか知らないけどお化け屋敷全体の様子をじーっとバレないように観察しているそうです。お化け屋敷がイイカンジになれば本人的には満足みたいなので、邪魔をしたり嫌がらせをしたりはしないでしょう。そう考えるといい人なのかもしれない……。
余談ですが遊園地は肉球ハイランドという絶叫マシンやお化け屋敷にチカラを入れてるテーマパークです。
お礼の内容は特に決まっていないのですが、順当に行くと遊園地の無料チケットと園内商品券が貰えるかと思います。