爆発である。
高層ビルが爆発に包まれ、飛び散る破片に混じって僕らのヒーロー・ロージープリンスが宙を舞った。
白いタキシードを思わせるヒーロースーツ。胸に咲いた真っ赤なバラ型のバッジがきらりと光る。
ロージープリンスは空中で十七回宙返りしてついでに横にも十回転すると不自然なほどソフトに、そしてピンポイントに街灯の上へと着地した。
美しく髪をかき上げ、カメラ目線できらりと笑う。白い歯が虹色の光を放った。
更に美しくポーズをきめ、そこから美しくマントを翻してポーズを変える。
「悪党よ、そこまでだ! 町が悲しみに泣いた時、美女の涙が落ちる時、光と共に現われる……」
ババッと更にポーズを変え、まばゆい後光と共にポージング。
「ロージープリンス、降臨!」
対して、低いところで全身黒タイツの男たちがケケーッとか言いながら拳銃を乱射した。
「トウッ!」
不自然な浮遊感と共に飛び上がり、弾丸をかわしながら着地。
美しく手刀を放つと、黒タイツたちをたたき伏せる。
「むっ……!」
何かに気づいてカメラ目線で振り返る。
すると、黒タイツが縛られた美少女に銃を突きつけているではないか。
「きみっ……人質をとるとは、なんて卑劣で醜いんだ!」
「たすけてロージープリンス!」
「その願い、聞き届けたっ!」
トウッとか言って宙返りをかけると、いつのまにか黒タイツの後ろに着地して手刀でガッとやった。
ぐえーとかいって倒れる黒タイツ。
縄をほどかれた美少女は感謝を述べながら抱きつく――と、台本には書いてあった。
「カットカット! なんで抱きつかないの! ヒロインが感動してロージープリンスに惚れるシーンじゃないの!」
「こんな役だなんて聞いてないっ!」
アシスタントが持ってきた台本をべしーんと地面に叩き付ける
桃川 圭花。
ロージープリンスこと
花椿 涼太郎はやれやれといった様子で肩をすくめた。
「仕方ないじゃあないか。僕を間近で見れば、美しさのあまり触れることをためらうのが人の情ってものさ」
「デスヨネー!」
両手をもんでえびす顔になる監督。周りのスタッフがまた始まったよという顔で上を向いた。
同じく上を向いて時間が過ぎるのを待っていた圭花。彼女のポケットでスマートホンが震えた。
「おっと、ごめんごめん。ちょっと出ていい?」
手を翳して場を離れ、スマートホンを耳に当てる圭花。
暫くしてから、はたとその動きを止めた。
「……うん、うん。分かった。今から行く」
通話を終えたスマートホンをポケットにねじ込み、くるりときびすを返すと、圭花は両手を合わせて頭を下げた。
「ごめんなさいっ! 急な用事ができちゃって、ちょっと抜けます!」
「えっ」
唖然とする監督を振り切るように走り出し、撮影所の外に止めてあったバイクへと飛び乗る。
遠ざかっていくエンジン音。
急にヒロイン役がいなくなってガヤガヤとしだす撮影所。
その中心で、涼太郎はいつになく真剣なまなざしで圭花の走り去った方角を見つめていた。
「ついに開かれてしまったんだね……地獄の扉が」
ごきげんよう、こちらはアメリカンなヒーローを描くIFシナリオ『コミックヒーローズ ダークナイト・カミング』の続編にあたるシナリオです。ご好評につき第二弾の封切りでございます。
前回の参加者さんも今回からの飛び入りニューフェイスさんも大歓迎! 勿論、前回と同じキャストだけど違う役、なんて設定もOKですよ!
■世界観
寝子島と似てはいるけど違うIFの世界。
ここは光と闇の混じる町、ネコアイランドシティ。
特殊体質者や天才科学者、知能犯に宇宙人。闇(ヴィラン)に脅かされるこの町は、光(ヒーロー)によって救われてきた。
かつて倒され収監されたヴィランたちが脱獄した『ダークナイト事件』はヒーローたちの活躍によって収拾され、町は平和を取り戻していた。
……かに、見えた。
■事件
『ダークナイト事件』の裏で秘密裏に動いていたのは、地獄と現世を入れ替えてしまうという世界崩壊級の危機でした。
そのことに各々気づいたヒーローたちは開かれた『地獄の門』へと集結し、世界を救う戦いに身を投じることになるのです。
……という大筋がありますが、このシナリオに参加する皆さんは全員が主役級。架空視点から見れば主演映画やコミックシリーズをもつようなヒーローです。
なので、登場するヒーローによってはシナリオが変わる可能性もあります。というか変わります。どう変わるかは、全く分からない!
■活動を描こう!
ヒーローとなったキャラクターが、この『ヘルズゲート事件』でどう戦うのかをアクションで決定します。
基本的には各地に現われた地獄の手先『ゴースト』や昔から戦っていた宿敵ヴィランとの戦いに身を投じていたりです。
『悪の手先だったが寝返った』『ヒーローのサイドキック(助手)としてサポートを行なうことにした』といった特殊なプレイもOKです。滅多に無いヒーロー時空の空気をご堪能ください。
戦うヴィランの設定も、この際だから自分で考えてしまってもOKです。
もちろん、おまかせ頂ければ、ピッタリの悪役をご案内いたします。
※補足:ヴィラン側でのプレイですが、今回はナシとなっております。
■ヒーロー補正
キャラクターにはヒーローとして活動できるだけの運命的な補正がかかっています。
類い希なる格闘センスや、鍛えられた肉体や、咄嗟の機転や悪運の強さなどです。
それに加えて独自のヒーロースーツとヒーローネームを持っていて、正体を隠すことができます。
ヒーロースーツはただ身を隠しつつ個性をつけるだけのアイテムではありません。ハイテクによって様々な能力が付与され、凶悪なヴィランたちと戦うことができるのです。
(どんな経緯でヒーローになったのか、どんなスーツを着ているのかを考えると妄想が膨らんで非常に豊かにお楽しみ頂けます)
もし発想に困りましたら、『○○な雰囲気のヒーローになりたいんだけど』と青空コンシェルジュにお申し付けくださいませ。ぴったりのスーツやヒーローネームを手配いたします。
ろっこん能力は使えてもいいですし使えなくても構いません。
もし能力がなくても鍛えた身体やハイテクアイテムなんかで戦うことができますしね。