そこは異空間のような場所だった。
静かに揺れる緑色の空。周囲にはどこまでも続くと思える白い海が揺らめいている。
その海に浮かぶ様、大きな橋が存在していた。
最初の地点には小さなゲートがあり、そこから一直線に800メートル程進んだ所に大きな扉がある。
その扉の前に一人の少女が立っていた。
「ハガル様……この命に代えましても、ここは死守致しますッ!」
強い決意を瞳に宿し、まっすぐに前を見据える少女……イヴァは自分の胸のあたりを抑えると空を眺めた。
(私にはもう、こういうことしかできない……あの人達の様に自由に生きれたら、私は――――)
◆
橋の出発点、小さなゲートから現れる三人の人影。
一人目は透き通るような青い長髪でどこかお淑やかな雰囲気を纏う女性テューアだった。
「どうやら無事に繋げることができたようです、二人とも準備はいいですか?」
二人目は金髪でわがままボディの露出高めな女性ツクヨであった。
ツクヨは振り向かずに言うテューアにいつもの口調で返した。
「準備はいつでもいいですよぉー、敵の本拠地に殴り込みとはいいですねェッ! わくわくしますよぉぉーー!」
そう言いながら静かに立つテューアの横を駆け抜け、一直線にツクヨは橋の上を駆けた。
目の前にはおびただしい程の魔物の群れ。
橋の横幅が人数十人は横並びで歩けるほどに大きい為か魔物達は部隊を組み、最奥の扉を守る様に防御固く布陣している。
だがそんなことはツクヨにはお構いなしである。
彼女にとって目の前に敵がいる、それだけが重要なのだから。
ツクヨは右手から赤い鎖をじゃらりと顕現させるとそれを右へ薙ぎ払う様に振るった。
盾等を構え、防御を固めていた魔物達であったが鎖の衝撃に耐えられず次々と吹き飛んで宙を舞う。
一部の魔物は橋から吹き飛ばされ、周囲に広がる白い海へと落ち、溶けて跡形もなく消えてしまった。
ツクヨは自分の周囲を包む様に鎖を展開するとそれらをチェーンソーの如く回転させる。
回転する鎖は攻撃に転じようとツクヨに迫った魔物を容赦なく細断し肉の塊へと変えていった。
血を浴びながらツクヨは妖しく笑う。
「あひゃぁっ! いいですよぉ、いいですねぇ、最高ですねェーッ! 鼻を突くこの香り、肉を引き千切るこの感触……どれをとっても身体がぞくぞくしてくるってものですよ、あぁ……まだまだ足りませんね。もっと、もっと……感じさせてくださいよぉッ!」
敵の防衛ラインを食い破る様に正面から削っていくツクヨを眺めながらテューアはゲートにいまだ挟まっている少女を引っ張り出す。
少女は勢い余ったのかごろごろと地面を転がった。
「わっぷぅ!? いたたたなのですよー。全く、あのゲートは閉じるのが早いんです、酷いですっ」
身体についた誇りを払いながら立つ少女――ちーあにテューアは静かに告げた。
「ツクヨが戦端を開きました……召喚の準備を。目指すリベレイターの本拠地に辿り着くには彼らの力が必要不可欠です」
「了解なのですっ! 召喚準備を始めるのですー!」
テューアは最奥にいまだ佇んだままのイヴァを眺め思う。
(敵の将はまだ動きませんか。此方の動きが予測されていたとはいえ、静かですね。やはり……待っているのでしょうか、彼らを)
一切感情の浮かばない表情のままテューアは言った。
「それならば、ただぶつけるまでです……全てをあるべき形に戻す、その為に」
◆
気が付くと目の前に大量の魔物達と戦闘を繰り広げるツクヨがいた。
召喚された者達を一望する様に眺めるとテューアは静かに語りだす。
「来ましたか、異界の方々。ここはリベレイターの本拠地『シュメルツ・トゥルム』の目の前です、あなた方にはかの地へ侵攻する手助けをお願いしたいのです。長らく防備に徹していましたがそれでは事態は好転しないと判断し今回の侵攻を行いました」
背を向ける様に静かに歩くテューアが地面に手をかざすと白い台座がせり出す様に現れる。
それは陶器の様につるつるとした質感の傷一つない台座であった。
「この台座に手を置けば、数種類の装備の候補が見えるはずです、その一つを選び……前線で奮闘するツクヨの元へと向かってください。目的はただ一つ、最奥の幹部イヴァを倒し……本拠地へと続く扉を解放する事です」
「わたしも手伝ったのですよっ! すっごくすっごくがんばったから良いのがでるはずなのですっ!」
ちーあ製の装備もある事に不安を覚えつつも台座に手をかざすとそれぞれが望んだ装備が顕現する。
それらを構え前線を見ると、そこではテューアの言った通りツクヨが奮戦していた。
ゴブリン、オークに始まり巨人や虫、甲殻類の類まで敵の種類には節操がないようだった。
ツクヨを手助けする為、彼らは飛翔するちーあと共に駆けていく。
背後から注がれるテューアの冷たい視線に若干の不安を覚えながら。
お初の人もそうでない人もこんにちわっ! ウケッキです。
今回は決戦シナリオとなっておりますので激しい戦いが予測されます。
以下の情報は事前にテューアから聞いていたなどとしてOKです。
また、ろっこんが強力に描写される事がありますのでご了承ください。
それでは皆様の奮戦、ご期待しております。
◆今回の目標
イヴァの撃破、最奥の扉の解放
◆敗北条件
テューアの撃破
◆敵の構成
敵は三段に分かれて橋を守備しています。守りはとても固くツクヨですらいまだ一段目の表層すら突破できていません。
・一段目
ゴブリン、オークからなる歩兵集団です。盾や大盾、重鎧を装備している為に動きは遅いですがその守りの固さは並みの兵士達では太刀打ちできない程です。一般的には雑魚と評される彼らですがこの戦いに置いては雑魚とは言えないでしょう。
・二段目
硬い甲羅を持つ巨大甲殻類とそれらの周囲を守る様に軽装の巨人が配置されています。
甲殻類には並みの武器は歯が立たず、折れてしまうでしょう。ある程度の魔法への耐性もあるようです。それを守る巨人の大きさは5メートル程で動きは緩慢ですが一撃を食らえば即戦闘不能と言ったこともあり得るでしょう。
・三段目
人型の昆虫兵や数匹の巨大な蜘蛛がイヴァ、扉を守る様に配置されています。
俊敏な動きと鋭い牙や爪を持つ人型の昆虫兵と絶大な攻撃力を誇る巨大蜘蛛との組み合わせは簡単には攻めにくい状況を生んでいます。
◆戦闘場所ビックブリッジの情報と周囲の情報
ビックブリッジは白い海に浮かぶ巨大な橋です。その形は中世の城へと続く大橋を想起させます。
材質は見た事もないような白い素材でできておりとても固いですが壊れない程に硬いわけではありません。
一面に広がる白い海ですがそれらは綺麗な見た目とは違い強酸性で落ちればまず命は有りません。
◆用意された装備
・ドリルブレイド
テューアが用意した大剣で身の丈ほどもある長大な剣です。
重さはそれなりにあり非力な物では扱うことは困難でしょう。ですが切れ味はお墨付きで硬い鎧ですら断ち切る事が可能です。刀身の中心部にドリルが格納されており、柄のレバーを握り込むことで刀身が開閉しドリルが出現、回転します。
・雫の太刀
テューアが用意した長い太刀です。大きさの割に軽く、常に刃が水で濡れている為に切れ味が落ちません。また扱うにはコツがいりますが鞘から勢いよく振り抜く事で水の衝撃波を放つこともできます。連発はできません。
・炎雷の扇子
ちーあの用意した扇子です。表には炎、裏には雷が描かれています。
それぞれ使用したい面を表にして振ることで炎や雷を操る事が出来ます。ただし見た目通りに脆いので使用すると徐々に焦げていき、最終的には大爆発します。
・ぶれすとがーど
ちーあが用意した胸を守る胸当てですが女性専用です。装備すると自動で胸に形が出る程にぴったりとフィットします。
そして胸を中心にバリアが発生し周囲1メートル程を防護する事が可能です。
ただ使用している間は胸が締め付けられ、痛みを伴います。さらにバリアに受けたダメージは装着者の胸へと耐えられる程度の痛みでフィードバックされます。痛みに耐えられなくなった時点でバリアが消失します。
なお、貧乳の方が装備するとバリアの出力が通常よりも増しますが痛みも倍となります。
◆参考データ
リベレイター
:総司令官ハガルの命じるままに複数の世界を移動、その世界にとって必要な人物
および存在を狙い、何かを目論む組織。
飛空艇、機械兵、魔導兵、モンスター兵などその兵力は侮れない。
寝子島については『フツウ』を壊す事が目的の様で過去に寝子島の空から地上目掛けて
侵攻したがその時は召喚された者達によって防がれている。
今回も何かしら企んでいた模様。
機構世界マシナリア
:魔法と機械を融合させた文化が発達している世界。
重火器やロボットとファンタジーの剣や魔法が共存している。
現在、リベレイターが狙いを付けている世界である。
幾度となくリベレイターの攻撃に晒されているがその度に召喚された者達に防がれている。
マシナリアの世界でもリベレイターは敵と認知されているが兵力差は歴然で
召喚された異世界の者達の助けがないと歯が立たない状態。
召喚された異世界の者達
:寝子島から『テューア』もしくは『ちーあ』といった異世界の存在により
機構世界マシナリアへ強制的に召喚される者達の事。
基本的に寝ている状態で召喚され、解決してほしい事件の一部始終を夢として見せられる。
事件を解決すれば寝子島へ戻る事ができ、自分の布団で目が覚めるといった具合である。
ツクヨ
:リベレイターに所属していた金髪紅眼の少女。巨乳。わがままぼでぃ。羞恥心皆無。
人を殺す事に何の罪悪感も抱いておらず、寧ろ楽しみを覚える性格。
しかし無為に人を殺す生活に何かしらの違和感を感じていたらしく、自分自身の
本当にやりたいことを探す為に動き出しちーあの元に世話になっている。
戦闘方法は自分の血を武器へと変じさせ自在に操って攻撃する。魔法の心得もあるようだ。
なお、からかいやいじわるといった悪戯が好きな模様。
自分にとって楽しい事の塊である異世界の者達の事を大変気に入っている。
近々、寝子島に遊びに行こうかとも考えているようだ。
イヴァ
:リベレイターの副官である悪魔の少女。
見た目は幼いが、身体はなかなかに育っておりその色気で知らずに相手を誘惑してしまう事も。
ハガルを心の底から信頼しており、彼の意思に背くことはない。
戦いも楽しいという事で大好きな為か、幹部でありながら後ろに控えている事をせず
常に最前線に出ている。
とある戦闘で手傷を受けて以来、最初から全力で相手を叩き潰すスタイルに戦い方を変えている。
その時に受けた傷は完全に癒えても痕が残り、彼女の人間への憎悪を激しく燃え上がらせていた。
しかし異世界の者達との戦いを経て『今の自分』というものに疑問を抱き始めるも何も変えられない
と思いその感情を押し殺している。
戦闘時は刃は大きめで先端に槍、刃の反対側には斧を配置した大鎌を振るって戦う。
その武器の大きさに似合わず腕が見えなくなるほどの高速戦闘を行う。
テューア
:異世界の者達を召喚する力の持ち主でリベレイターから機鋼世界マシナリアを守ろうとする女性。
青い長髪と聖職者が身に纏う様な白いローブを身に付けている。
静かでお淑やかな女性だがどこか機械じみており、冷たい印象を受ける場合も。
なかなかのわがままボディだが露出が少ない為、それを見る機会はほぼない。
戦闘能力は単独で結界を張ったり、バリアを刃状に収束して振るうなどとても高いがあまり自ら動こう
とはせず、あくまでも接近時の自衛のみである。
ちーあ
:幼い少女で水色の長髪、露出の高い白い服を身に付けている。ちっぱいロリ。
異世界の者達を召喚する力の持ち主だがまだ未熟だからか、やたらと失敗が多い。
テューアにできることは大体はできると自称しているが、そのどれもが詰めが甘い。
装備開発が趣味で開発される装備は強力だが意味の分からない能力が追加されており、扱い辛い。
当人が言うには『完璧は人をダメにする』らしい。
最近、ツクヨが共に生活するようになり、からかってくるツクヨに悩まされている毎日である。
寝子島にも興味があるようで遊びに行きたいな、と思っているらしい。