扉を潜ると、空に出た。
より正確に言うと、雲海の上に島のように突き出た巨岩の上だった。
視界の半分より上は青藍色、半分より下はまるでミルクの海のように真っ白で、ところどころ灰色の巨大な奇岩が顔を出している。自分たちはその巨大な奇岩のひとつにいた。
「うおおおおお……! 絶景だな!!!」
風雲児 轟ことザ・ストレイト/アストラルは気持ちよくポーズを決める。
問題は、どこへ行けばいいかだ。次の階層へ行くためにはこの階層のオーブに火を灯す必要がある。そのためにはオーブについての情報が欲しいところだが、ステラの姿はなく、聞く相手がいない。
と。
空のかなたから、複数の点がまっすぐこちらへ飛んでくるのが見えた。この階層の生物だったら話を聞けるかもしれない。そう思った轟は大きく手を振って呼びかけた。
「おーい!!」
「あんちゃんダメだ!」
ふいに足元から声がして、足首をギュッと掴まれた。
見れば、地面に穴が開いていて、子どもが数人、顔を覗かせている。
「『黒衣の魔女』に見つかったらヤバイよ。早く穴の中に!」
リーダーらしい少年に訳も分からず穴の中に引きずり込まれ、口を手で押さえられる。
上空を、黒髪に裾の長い黒のドレスと黒のローブを纏った女が行き過ぎていった。たなびく黒のヴェールはまるで蝙蝠の羽根のようだった。女の顔はヴェールに隠れて見えなかった。口元の、赤いルージュ以外は。
魔女は銀色の蛇のようなものに跨っていた。銀色の蛇は魔女の指示で液体のように形状を変えた。
「あれは魔女の使い魔だよ。魔女は、あの銀の使い魔を意のままに操れるんだ」
少年がこそこそと耳打ちしてくれた。
魔女の周りには子どもほどの大きさの鳥に似た形の泥人形が数十体、取巻きのように付き従っていた。
「あれはゴーレム。一匹が知ったことは、全員に伝わっちゃう。やっかいなやつだよ」
魔女とゴーレムたちが通り過ぎたのち、轟と少年は穴から顔を出して魔女たちが向かった方角をみた。
そこには巨大な荒々しい崖が聳え立っており、崖の上には蝋燭のような形の古城が建っていた。
「オレ、
チッタ」
轟を穴の中に引っ張った、リーダーらしき少年が言った。チッタは12~3歳で、ぼさぼさの茶色の髪で帽子を被り、裾の破けた釣りズボンを履いていた。他の子も似たり寄ったりで、綺麗に髪を結ったり、洗濯したての白いシャツを着ているような子は一人もいない。そして誰もが、轟たちへ期待に満ちた眼差しを向けていた。
「あんちゃんたち、オレらを助けに来てくれた勇者だろ? 夕べ、
サティアの占い水晶玉に金の髪の女の子が映って言ったんだ。『これから勇者が助けに行くのよー』って」
サティアというのは、チッタより一つか二つ小さい三つ編みの女の子で、占いが得意らしい。
ステラか、と轟は苦笑した。
この子達が勇者と信じているなら、期待を裏切るのは忍びない。
「たしかに俺たちは勇者だ。俺たちにどうしてほしいんだ?」
「黒衣の魔女をやっつけて。魔女は人間を見つけると城に連れ去ってしまうんだ。だからオレらはいつも魔女に見つからないように隠れてなきゃいけない」
「ひどい話だ。お前ら、子どもだけじゃないか。大人はどうした?」
チッタはゆるゆると首を振った。
「大人はみんなお城に連れていかれた。お城の地下でゴーレムの材料になる土や石を掘らされてるみたい」
「だったら大人たちも助けよう」
「できるの?」
「やってみるさ。その代わり、俺たちもお前たちに聞きたいことがあるんだが」
轟はチッタに、オーブの在処を知らないか聞いてみた。
チッタは知らないと言ったが、サティアが水晶玉で占ってくれた。
「……オーブも、お城の中にある、みたい……」
「丁度いい。お城へはどうやって行く?」
「雲海の中を、飛空艇で飛んでいけるよ」
どうやらこの世界では、人々は巨大な奇岩を刳り貫いて住居にしており、奇岩間を行き来する小型の飛空艇は一般的な乗り物であるらしい。
「よし決まりだ。城に乗り込み、魔女とゴーレムをぶっ飛ばして、大人たちを助けて、オーブに火を灯す!」
「この階層を救うのは、俺たちだ!!!」
お久しぶりの風雅です。
ファンタジーっていったら悪い魔女とゴーレムですよ!!!(あいさつ)
というわけで、今回は星幽塔第六階層をお届けいたします。
群れで思考を共有する存在とのバトルがメインテーマとなります。
ステージ
第六階層は、空と雲海と奇岩の世界です。
この世界では、人々は巨大な奇岩を刳り貫いて住居にしており、
奇岩間を行き来する小ぶりの木製帆船のような形の飛空艇が、現代の車やバスのように一般的な乗り物です。
飛空艇は雲の上を航行するのが一般的でしたが、近頃は見通しのよい空を行くとゴーレムに襲われるため、
雲海内を隠れるように航行することが多いようです。
現在、第六階層は、黒衣の魔女と、魔女の手下のゴーレムたちに脅かされています。
大人たちは魔女の城に連れ去られ、残された子どもたちは助け合って必死に生きている状況です。
大人たちが帰ってくれば、子どもたちも元のように平和に暮らすことができるでしょう。
ミッション
城に乗り込み、黒衣の魔女とゴーレムたちをやっつけ、大人たちを救い出せ!
【ゴーレムの城】
魔女は、巨大な崖の上に建つ蝋燭のような形の石造りの古城を牙城としています。
城には、魔女に作られたたくさんのゴーレムがいます。
A~Cのいずれかを選択し、そのうえでどのような行動を取るかをお書きください。
最終的にミッションを達成できるようにアクションを投稿していただければと思います。
【A】空の上にて
PCたちを乗せた飛空艇は雲海の中を航行して、
城が建っている崖の壁面にある、子どもたちだけが知る秘密の穴を目指します。
飛空艇の運転はチッタが行います。チッタの飛空艇は古くてエンジンの動きが怪しい上に、
運転の腕もあまりよくないので、安定航行には程遠い動きをして雲の上に飛び出しがちです。
<騎士の力>を宿していて、空を飛ぶ乗り物を選択していれば、自分の乗り物で行くこともできます。
雲海より上に出ると、見張りゴーレムに見つかって、襲撃を受けるので注意してください。
逆に、陽動で見張りを引き付ける手もあります。
飛空艇は、小ぶりの木製帆船のような形をしており、甲板に出ることは可能ですが、
主に移動用の乗り物のため、長距離武器の類は搭載していません。
【B】城の最上階(四階)にいる<黒衣の魔女>を目指す
秘密の穴から城の中へ向かうと、一階にある一室の衣装戸棚に出ます。
廊下はゴーレムたちが行きかっていますが、うまく目を欺けば、
ゴーレムたちの目を盗んでさらに先へ侵入できそうです。
城の内部は四階建てになっていて、廊下に沿ってたくさんの部屋があります。
ゴーレムは基本的に廊下をうろうろしていて、室内にはいません。
それぞれの階は階段で結ばれており、各階の階段前には守護ゴーレムがいます。
一階、二階、三階と少なくとも三体の守護ゴーレムを突破しないと最上階の黒衣の魔女へは辿りつけません。
守護ゴーレムは、ほかのゴーレムより一回り大きく、身長2メートルほどの大きさで、
戦闘相手の戦い方やろっこんを学んだり真似したりします。
一階のゴーレム(黄)は、パンチやキックなど素手で戦う泥人形です。
ただし、二階のゴーレム(青)は、一階のゴーレムの戦闘経験を、
三階のゴーレム(赤)は、一階と二階のゴーレムの戦闘経験を引き継ぎますのでご注意ください。
【C】城の地下にいる大人たちを助ける
城の地下には囚われの大人たちがいて、掘削作業に従事させられています。
秘密の穴から地下へ向かうと、大人たちが囚われている掘削トンネルの上にでます。
子どもたちは、時折ここにきては、魔女やゴーレムに見つからないよう
大人たちと話をすることがあったようですが、これまで助け出す力はありませんでした。
大人たちはゴーレムに見張られていますので、こっそり助け出さなければいけません。
ゴーレムは脱走者や侵入者を見つけると、知識共有の能力でゴーレム仲間を集めます。
【D】その他
A~Cの選択肢にない、トリッキーなことをしたい方はこちらをご選択ください。
いずれの場合も、群れで知能・思考を共有して適応するゴーレムたちとどう戦うかがカギとなります。
また、どの星の光をまとい、その光がどんな形になったかを
アクション冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のようにお書きください。
登場NPC
・チッタ
第六階層の少年。子どもたちグループのリーダー格。12~13才。
飛空艇の操縦ができる。
チッタとサティアは、皆を飛空艇に乗せてお城へ連れて行ってくれ、その後もPCたちに同行します。
・サティア
第六階層の少女。11~12才。
おどおどした感じの三つ編みの少女で、水晶玉占いが得意。チッタの右腕的存在。
・ステラ
この階層では姿が見えません。サティアの水晶玉で占ってもらえば、何をしてるかわかるかも?
・ゴーレム
子どもほどの大きさの土と石でできた自動人形です。
彼らは一体一体には意志はなく、数十体でひとつの群れとして、次のような特徴があります。
・知識や経験をゴーレム同志で共有する(一体が知ったことは、即座に全体に伝わる)
・群れの一体が経験したことに対しては学習・対処法を身につけて適応する
・適応時、形状を変化させたり、新たな能力を得たりする
ゴーレムは城内や城の周辺のどこにでも出没します。
PCたちを見つけると敵と見做し、問答無用で襲ってきます。
現時点で、ゴーレムが鳥に似た形状に変形して空を飛べることは確認されています。
一体倒されるごとに群れとしてみなさんの戦い方を学習して、どんどん強くなることでしょう。
・守護ゴーレム
2メートルほどの大きさの特別なゴーレムです。
黄、青、赤の三体いて、守護ゴーレムは守護ゴーレムのみで知識共有します。
・黒衣の魔女
黒髪に裾の長い黒のドレスと黒のローブ、黒のヴェール……と黒尽くめで、
基本的に口元だけが見えている妖しい雰囲気をたたえた妙齢の美女。
ゴーレムたちの主であり、自身も、液体状の銀の使い魔を意のままに操れる能力を持つ。
星の力
星幽塔の中では、ひとりにひとつ、不思議な光が宿っています。
剣士の光(青) :剣技が上手くなる
闘士の光(オレンジ):腕っぷしが強くなる
狩人の光(紫) :弓矢が強くなる
盗人の光(金) :普段より勘がはたらき、器用になる。
(例:宝物を見つけたり、鍵開けが得意になったりする)
魔火の光(赤) :火の魔法を使える/星の光が宿った武器が火属性になる
(例:火の玉を飛ばす魔法が使える、刃に炎を纏ったりできる)
魔水の光(水色) :水の魔法を使える/星の光が宿った武器が水属性になる
(例:水流を鉄砲の様に飛ばす魔法が使える、刃に水を纏ったりできる)
魔風の光(緑) :風の魔法を使える/星の光が宿った武器が風属性になる
(例:つむじ風を起こす魔法が使える、刃に旋風を纏ったりできる)
魔土の光(茶) :土の魔法を使える/星の光が宿った武器が土属性になる
(土礫を投げつける魔法が使える、刃に砂を纏ったりできる)
癒しの光(白) :自分や他者を癒すことができる
騎士の光(桃) :乗り物(生き物や機械類。大きさは馬程度まで)を巧みに操り戦う
※星の力を小型の乗り物に変化させることもできる。
ペガサスなど架空の生き物、一般的な装備などもOK。
OK:炎を吐くチビドラゴン、手綱や鞍のついた馬 等 NG:機銃のついたバイク 等
(例:【騎士の力/剣】馬を巧みに乗りこなすアクション。※この場合乗り物は別途調達
【騎士の力/馬】星の力を馬として実体化し、巧みに乗りこなすアクション)
光は体に宿ったあと、その者にあわせた形状に変化し、身につけることになります。
(例:指輪、体に埋め込まれる、武器になっている、愛用の武器の装飾に)
※星の力のサポートは、星の力が宿ったアイテムを所持していない時は受けることができません。
※武器(剣、弓、斧、杖など)はひとりひとつ。双剣など2つで1セットのものなども可。
※星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようです。
(このシナリオの中では変化しませんので、今回はひとつだけ選んでください)
※もれいびは「星の力」と「ろっこんの力」の両方使えます。
※ひとは「星の力」を使えます。
※塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
※もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
どの星の光をまとい、その光がどんな形になったかを
アクション冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のようにお書きください。
衣装にこだわりがあればそれもお書きください。
それではご参加お待ちしております。