前回(1999年からの使者)のあらすじ:
寝子暦1999年から来た時空歴史学者アフマド博士とともに、未来へ旅立ったR&Rエージェントたち。『ピラミッドエミッション』計画を実現させ、地球に落下しようとしている隕石を破壊して地球を救うべくヘロドトスの迷宮に挑んだが、あと一歩のところで地球滅亡教の信者によって阻まれてしまう。
――地球滅亡まで、あと、17日。地球を救うことはできるのか!?
【寝子暦1999年7月11日、???】
「ん……」
碧川 雪月はコンクリート壁の殺風景な部屋で目を覚ました。Leidenschaftの仲間に掛けてもらった少年化のろっこんは解け、元の姿に戻っている。部屋にはいっしょに未来に来た幾人かが横たわっている。ほとんどの者は無傷のようだが、
鬼崎 あやめは腹部に傷を受けており紙のような顔色だ。簡易な手当はされているものの、包帯が血で赤く染まっている。
雪月は他の仲間に連絡をしようとしたが、通信機と武器は奪われていた。
『目が覚めましたか』
機械音のようなくぐもった声がした。雪月が見回すと、部屋の隅に監視カメラとスピーカーがある。声はスピーカーから聞こえてきた。カメラでこちらの様子を観察しているのだろう。
「あなたは誰? ここはどこ?」
『私はカナン様の五番目の端末、ナンバー5です。ここがどこかは申せません』
「……他の仲間はどうしたの?」
『今頃は砂漠の下かと思われます。アフマド博士は処刑します』
「処刑……!」
『当然でしょう、彼は異端の煽動者ですから。3日後深夜0時、場所はあなたがたが希望を託した大ピラミッドの頂上で、彼は磔にされ処されます。数多の教徒が大ピラミッドに集まり見守ります。全世界に中継もされる予定です。それを見た人類は、滅亡を受け入れる心の準備が決定的に整うでしょう』
「なんてことを……私たちも処刑されるの……?」
『いいえ。あなたがたは重要なサンプルです。あなたがたはカナン様によって未来に残すべき遺伝子と判断されました。アフマド博士の処刑が済み次第、冷凍処置を行いますので、どうぞ安静にお待ちください』
「冷凍処置……カナン様って……いったい滅亡教は何を考えているの……?」
【同日、ヘロドトスの迷宮下層】
「みんな、無事……じゃないみたいね」
迷宮の最深部で気絶していた者たちが目覚めたとき、幾人かの姿が消えていた。消えたのは雪月をはじめ、幼い容姿だった者や少女が主だ。滅亡教徒の姿もなく、雪月たちは連れ去られたのだと思われた。時計を見ると日付が7月11日になっている。迷宮に入ったのが10日の朝だったから、知らぬ間に24時間近く経過していたようだ。
黄金のキャップストーンは変わらぬ姿でそこにあった。ひしゃげたナイフや落ちている薬莢から察するに、地球滅亡教の者たちは、一度はキャップストーンを破壊しようと試みたらしい。だが、傷一つつかなかったので放置した、ということのようだ。
ブリジット・アーチャーはこの状況を「不幸中の幸い」と言った。
「キャップストーンはここにある。これを運んで大ピラミッドの頂上に乗せれば、万事オッケーでしょ?」
「……どうやって運ぶの?」
まろびながら現れたのは、アフマドの仲間である白髪のタラであった。
彼女はあちこち傷だらけで憔悴しきった顔をしていた。
「そのキャップストーンはとても重いわ。それに、気絶している間に入り口を爆破されて、閉じ込められたの。アフマドとあやめの姿はなかった。持っていたタイムトラベル装置でユリウスをあなたたちの時代に行かせたけど、助けを連れて戻ってきてくれるかどうか……」
【寝子暦1370年2月某日、寝子島シーサイドタウン】
「これって……」
ファラオ・ハウンド犬のユリウスが、はっはっと舌を出しながら、
桜 月を見つめている。
月の手の中には、卵型のタイムトラベル装置が数個。それから一通の手紙がある。
「
『作戦未遂。アフマドと仲間数人が滅亡教徒に誘拐された。支援求む。1999年より タラ』――か。これは困ったね。どうする、リンコさん」
「そうね……、こんな風に助けを求めてくるなんて、よほどのっぴきならない状況に違いないわ」
リンコ・ヘミングウェイもいつになく神妙な面持ちだ。
ソファから立ち上がると行ったり来たりして考え込んでいたが、やがて立ち止まって受話器を取った。
「未来へ助けに行ってくれる人がいないか、心当たりに連絡してみる。あたしは梨香に戻ってきてほしい。梨香だけじゃないわ、未来で死んでほしくない人、たくさんいるもの」
「そうだね」
月は、あやめがおすそ分けに残していったおにぎりを見つめた。
「
おにざきのおにぎりだって、また食べたいものな」
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
碧川 雪月さん、鬼崎 あやめさん、ブリジット・アーチャーさん、桜 月さん、
ガイドへのご登場ありがとうございました。
前回は地球滅亡教によって阻まれてしまいましたが、今回こそ救いたい、未来を!
※詳しくは、前回のガイドおよびリアクションをご確認ください。
前回の結果を受け、PCによってスタート地点が分かれます。
前回ご参加の方は、お間違えのないようアクションをおかけください。
※今回から参加の方
【C】皆を助けるため迷宮の外にタイムトラベルした
【D】現代にとどまる
どちらかをご選択くださいませ。
<状況>
【A】滅亡教に誘拐された
(前回参加PC・以下、敬称略) 曖浜 瑠樹/鬼崎 あやめ/桜庭 円/トワ・E・ライトフェロゥ
新田 亮/畑中 華菜子/碧川 雪月/響 タルト/屋敷野 梢/ロベルト・エメリヤノフ
(NPC)アフマド博士(居場所不明)
現状:コンクリート壁の殺風景で窓のない一室に閉じ込められている。室内にトイレはあり。
通信機と武器は奪われており、外部との連絡は取れない。それ以外の持ち物は無事。
1日2回、小窓から食事の差し入れあり。
監視カメラで監視されている。
ある程度の人数がいるような気配はあり、
察するにそこそこ大きい施設で、滅亡教のアジト的な場所ではないかと思われる。
ナンバー5と名乗る声の主は施設内のどこかにいるはず?
アフマド博士が3日後に処刑される。その後、自分たちも冷凍処理されるらしい。
Hint:脱出を試みてもいいですし、大人しく時を待ってもいいでしょう。
部屋を脱出できれば、アクション次第では施設内の探索も可能です。
【B】ヘロドトスの迷宮内に閉じ込められている
(前回参加PC) 朝鳥 さゆる/入江 みつび/エヴァ・ブランシェ/恵御納 夏朝
尾鎌 蛇那伊/如月 庚/弘明寺 能美子/サキリ・デイジーカッター/志波 武道
握 利平/ブリジット・アーチャー/御剣 刀/八神 修/夜海霧 楓
(NPC)坂内 梨香(R&R)/タラ(白髪の女性)※未来のアフマドの仲間
現状:ヘロドトスの迷宮内部に閉じ込められている。
入り口は爆破されて崩落。
上層に行けば、外部との連絡は可能。持ち物は前回の通り。
黄金のキャップストーンは最深部にあるが、非常に重いため、
どうやって運び出し、どうやってピラミッド頂上に据えるかが問題。
Hint:迷宮からの脱出とキャップストーンの運搬が問題です。
脱出に3日以上かかるようだと餓死の危険があります。
また、大ピラミッドの周りは、処刑を見に来た滅亡教徒であふれている可能性があります。
【C】ヘロドトスの迷宮外にいる
(前回参加PC)なし
(NPC)オマー(恰幅のいい中年男性)/ジャック(金髪の青年)※いずれも未来のアフマドの仲間
現状:オマーとジャックは砂漠の真ん中にある迷宮の入り口付近で負傷して倒れている。
新たに未来に来た方は、オマー、ジャックと接触して、事態の解決に当たってください。
現代から持ち込める物は、身に着けられる程度のもの。
翻訳機、通信機、レーザーガン、ナイフ程度の武器はオマーが持っているので未来で入手可能。
分乗してきたジープやバンが数台あるのでそれも使用可能。
カイロ市街までは車で砂漠を飛ばして約2時間。
カイロの街の外にあるアフマドの研究所にはスタッフが数人残っていて通信可能。
来てもらったり、必要なものや情報を揃えてもらったりなど、協力も仰げます。
Hint:情報収集をしたり、迷宮内のメンバーとの合流を目指すのが良さそうです。
【D】1370年の寝子島にいる
(前回参加PC)桜 月
(NPC)リンコ・ヘミングウェイ(R&R)、ユリウス(犬)
現状:ユリウスが未来から持ってきた手紙と、タイムトラベル装置がいくつかある。
タイムトラベル装置を使うと、
1999年7月11日ヘロドトスの迷宮の外(【C】)にタイムスリップする。
Hint:リンコはよほどのことがない限り、現代で待機。
ユリウスが未来に戻るか現代に残るかは皆さんのアクション次第です。
◇アクションについて
・アクション冒頭に、スタート地点【A】~【D】のいずれかをお書きください。
・ろっこんは通常通り発動します。
・通信、もちものについては、スタート地点によって違います。ご確認ください。
・未来で入手可能なものもあります。現代より発達している物もあるのでアクションで試してみてください。
寝子暦1999年、地球はどうなってしまうのか――。
それでは皆様、ご参加お待ちしております。
※未来は常に変化する可能性があり、この1999年が、実際の未来の姿かどうかはわかりません。
※うまく解決しなかった場合、シリーズ化する可能性もあります。