「……昔はね、人は夜や暗闇を恐れたものなのですよ」
ここに至って初めて少年はぼんやりと不思議に思った。
なぜ、僕はこんな話を聞いているのだろう。
「妖怪や怪異が身近にあった。人は恐れつつもそのような存在を敬い、ときには愛しくさえ思ったのです」
学校の帰り道、ちょっと寄り道してカフェでお茶した。1人で紅茶を飲みながらスマホでアプリゲームを楽しんでいたはずだった。
なのに、いつの間にか向かいの席に見知らぬ男性が座っていた。
黒に近いブラウンのロングコートをまとい、バケットハットを深くかぶっていて目元はよく見えない。声と雰囲気から歳の頃は5、60歳といった感じに思える。
いつから座っていたのか。どのくらい話をしていたのか。
夢でも見ているように、違和感なく聞き入っていた。
「さて、ここまで私の話ばかりしてきましたが、今度は貴方にお尋ねしましょうか」
「……え、なにを、ですか?」
「これからお帰りになるのでしょう? 例えばその帰り道に出会ったら恐ろしいと思う妖怪はなんですか?」
「妖怪、っていっても、よく知りません」
某妖怪集めゲームが頭に浮かぶが、可愛いイメージしかない。
「なるほど、今のお若い方は怖い妖怪などご存じないのですねぇ……。では4択にしましょうか」
釣瓶落とし。木の上から人の頭や釣瓶が落ちてくる。人を食うとも伝えられる。
うわん。突然奇声をかけて驚かせる妖怪。驚いた人の命を奪ってしまうともいう。
飛頭蛮。ろくろ首ともいわれる空飛ぶ人の頭。やはり人を食らうとも伝えられる。
見越し入道。見上げるほどに大きくなる妖怪。そのまま見ていると死ぬという。
男が告げた妖怪の名前はその4つ。
少年は何も考えずに率直に答えた。
「僕だったら『うわん』です。夜道でいきなり声をかけられたら絶対驚いてしまいそうですから」
「ふむ、貴方は素直な方ですね。嘘は感じられない。……もし嘘をついていたら」
「何かおっしゃいましたか?」
「いいえ、何も。さて、それでは私は失礼します。お若い方とお話しできて楽しかったですよ」
「僕の方こそ、面白いお話が聞けて楽しかったです」
「そうですか、それは良かった。……それでは帰り道、お気をつけて」
男は音もたてずに席を立ち、静かに店を出て行った。
少年はしばし呆然としていたが、時計を見て愕然とする。
「やばい! もうこんな時間だ、母さんに怒られる!」
急いで支払いをすませ、外に出た。
そしてその日、少年は家に戻ってこなかった。
翌朝、通学路から離れた道ばたで気絶している姿を警察が発見する。
怪我もなく何か盗られたわけでもなかったが、この季節に一晩中外にいたせいか酷い風邪を引き、3日間寝込むことになった。
警察が事情を尋ねたが、高熱に侵されているせいかおかしな発言を繰り返していたそうだ。
曰く。
「妖怪に、『うわん』に襲われた。妖怪はいるんだ……」
さて、今、あなたの目の前にはロングコートの男がいる。
いつ現れたのか。どれだけ話していたのか、はっきり思い出せない。
そして会話の最後に男はあなたにこう尋ねるのだ。
「これからお帰りになるのでしょう? 例えばその帰り道に出会ったら恐ろしいと思う妖怪はなんですか?」
シナリオガイドをご覧下さいまして、ありがとうございます。
ゲームマスターを勤めさせていただきます、阿都(あと)と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
今回は今までのほのぼの調ではなく、怪奇バトルもの?です。
あなたは神魂の影響で生まれた都市伝説的存在「妖怪おじさん(仮名)」に出会ってしまいました。
「妖怪おじさん」は寝子島の一部で流行りだした都市伝説です。
キャラクターが既にその噂を知っているかどうかはプレイヤーの皆様がご自由に設定していただけます。
噂を知っている場合。
・いつのまにか側にいて、いつのまにか違和感なく会話をしている。
・会話の最後に怖い妖怪を聞かれる。なぜか絶対に答えてしまう。
・帰り道に自分が言った妖怪に会う。
・逃げ切れれば無事に帰れるが、大抵気絶して翌朝人目のつかないところで見つかる。
以上のような噂話になります。
キャラクターは妖怪おじさんに既に出会ってしまっています。夢心地で妖怪の話を聞き続けていたところです。
会話の最後に夜道で出会ったら一番怖いと思う妖怪の名を聞かれます。
その妖怪と必ず遭遇しますので撃退してください。逃げてもかまいませんが、最終的に必ず捕まります。
なんとかして妖怪を退けて無事に家へ帰ることが今回の目的です。
もれいびの方はろっこんガチバトル可能です。妖怪との遭遇場所では人目はいっさいありません。(妖怪とはそういうもののようです)
アクションには以下の点をお書きください。
1)すでに妖怪おじさんの術にかかってしまっていますので質問に無回答はできません。必ず妖怪の名前を挙げてください。
・日本古来の妖怪でなくても構いません。都市伝説的存在、西洋モンスターもオッケーです。
・ただしご自分で作ったオリジナルモンスターや、版権がある創作物のオリジナルモンスターはNGとなります。もしそのような妖怪を書いた場合は性質がほぼ同じで名前が一般的な妖怪に置き換わりますので、ご了承ください。
・またマイナーすぎる妖怪(ネットで検索した時に数ページでは情報を確認できないレベル)もNGとさせてください。申し訳ありません。
・もし妖怪名が浮かばない場合は、シナリオガイドと同じ4択が示されます。どの妖怪がそのキャラにとって怖いか考えて選択してください。
2)必ず参加キャラクターにとってその妖怪が一番怖い理由をお書きください。
・妖怪おじさんが理由に納得すればその妖怪が現れます。
・納得できなければまったく別の妖怪が現れます。そのキャラクターが苦手とするだろうかなり手強い存在が出現しますので、バトル結果が厳しくなるとお考えください。
・逆に言うと妖怪おじさんを騙せるほど巧妙な説明であれば、攻略法を知っている妖怪を指定できます。
3)妖怪と対峙したときにどう対処するか、お書きください。
・基本的には1)でお書きいただいた妖怪が現れます。
・2)の理由を反映した「怖さを演出する登場の仕方をする」とお考えください。冷静に行動できるかが第一関門です。
・その妖怪の弱点をつくような行動をとれれば撃退しやすくなります。ただし冷静に行動できない場合は失敗するかもしれません。
・妖怪は基本的に肉体をもって現れます。物理攻撃可能です。相応のダメージを与えれば消えます。
・そのキャラクターが帰り道に当然に持っていると考えられる道具は使用可能です。
(例えば剣道部なら竹刀や木刀、防具など)
・仮に負けたとしても気絶するだけです。バトルで負ったはずの怪我も戦闘直後には消えてしまいます。12月の夜ですから、よほどの理由がない限り風邪を引きます。
4)GAもできますが、妖怪と対峙するときは基本的に1対1の状況になってしまいます。
・「ひと」と「もれいび」がGAを組んだとしても「もれいび」はろっこん使用できる状況になるとお考えください。
あなたは無事に家に帰ることができるでしょうか!
それでは、ご参加お待ちしております。
どうぞよろしくお願い申し上げます。