ダンシングで人類愛な祭りの準備｜リアクション

ダンシングで人類愛な祭りの準備

【ダンシングで人類愛な祭りのトンビ便】

　奈良橋博美は考えた。

「生徒会選挙の時と同じく、トンビ便をまたやってみよう」

　トンビ便というのは、博美のろっこん『トンビの飛翔』による高速機動による、奈良橋式宅急便である。

「ねこったーで『運び屋』をやるとみんなに宣伝しておこう。一人でやり切るには限界だから、協力してくれる人も募集しておこう。あ、台車も用意しておかなくちゃ」

　博美は格闘少女であったが、よくある脳筋キャラではなかった。
　頭はきれるし、行動も早い。てきぱきとやるべきことをこなして、さっそくお手伝いを開始する。

「お、さっそく来たぜ。なになに？　『お腹が空いたから焼きそばパンを１０個』、これただのパシリじゃないか！？」

　突っ込みながらも、博美はきちんと仕事をこなす。
　校舎内は早歩き、人の見ているところでは通常ダッシュ、誰もいないところでは《トンビの飛翔》。
　状況に応じて、臨機応変に走り方を使いわけて、博美はさながら飛脚のように飛んで、飛んで、飛びまくる。
　博美への依頼内容は多岐にわたった。
『この申請用紙を提出してほしい』、『このイラストを部長に渡してほしい』、『ワイルドだろぉ？』等々。
　最後の一つは何か違うかもしれなかったが、とにかく依頼の内容が多岐にわたったのはまぎれもない事実だった。

（ただメッセージや画像をやりとりするだけならメールやＳＮＳの方が断然早い。けど、諸々の申請はいまだに紙でないといけない場合が多いし、モニターで見るのと実物を見るのでは色合いが随分と違うからな）

　だから、きっと需要はあるだろうという博美の読みはドンピシャリだったわけだ。
　そして、博美は今この瞬間もあっちへこっちへまさしくトンビのごとく学校を駆けずりまわっている。
　ときには荷物の運搬以外の付随業務を押しつけられることもあるが、可能な限り笑顔で対応している。

「ま、助っ人ができるなら形態にはこだわらないさ」

　そして彼女もまた全力の全力で祭りの準備を楽しんでいくのだった。