幕の内の内の内｜リアクション

幕の内の内の内

　クーラーボックスの中には、艶やかに身を光らせるサンマ。
「寝子島的に、サンマは外せないですよね」舞華が言う。
　外部からのお客様の為にも、サンマの一品は是非欲しいところだった。

　舞華は一匹取り上げ、素早く骨と腸を取り、切り身におろす。
　電光石火の早業。慣れきっている。流石、星ヶ丘寮所属のメイドだ。
　網の上でサンマがジュゥと音を立てる。
「魚には十分な脂がありますからね……」油脂を徹底的にカットしていく。緻密に、注意深く照り焼きを仕上げる。
　焼き魚を試すのは衛守。こちらも、慎重きわまりない手つきだ。

　同じように、手早くぱっぱと内臓を取るのは真央。
　背開き骨取り、塩と酢で１５分〆。
　皮はぎ骨取り、ラップ上の酢飯わさびと一緒にギュッと巻く。
　サンマ姿ずしの完成である。
　一瞬で完成。手間いらず、市販品を大胆に使った、真央のアイデアの光る一品だ。
「簡単な物はチャッチャとつくって、出来ないものは想像にお任せなのだ～！」

　次はサンマ太巻き。
　開いたサンマの上に、タレを大雑把に刷いて蒲焼にする。
　色とりどりの具材で巻いていく。
　卵。
　ほうれん草。
　おぼろでんぶ。
　細切り煮椎茸。
　干瓢。
　彩あざやかで、どれも見事に手を抜かれている。
　
　三枚に下ろされたサンマ三尾を、違った調理法で仕立てる。
　コチュ醤煮（コチュ醤、白だし、唐辛子、ニンニク）。
　紫蘇で巻いて、竜田揚げ。
　カレー揚げ。
　それぞれ上を開いて、稲荷の上に盛る。
　サンマ稲荷の完成である。