幕の内の内の内｜リアクション

幕の内の内の内

「よっしゃ、支度は整えたし……」

　宇佐見満月は、店舗の中を見渡した。
　ステンレスの調理台はきれいに拭き清められ、秋の光を浴びて輝いている。
　清潔な布巾、三角コーナー、どこもピカピカに輝いている。
　隙のない、充実した空間。

「ご近所さんから、調理器具も調達出来たさね……」

　大小各種の包丁、まな板、鍋、フライパン。どれも丁寧に手入れが行き届いている。
　満月は頷き、息を吐いた。

「あとは、集まるのを待つだけかね？」

　来たるべき演劇祭を控え、寝子島は浮足立っていた。
　満月の弟も、なにやらブタイカントクをやるとかで、連日舞台準備に奔走している。
　苦笑して見つめながらも、商店街側の人間として何かできないかと考えていた。
　――その時、表でどやどや騒ぐ声が聞こえた。
　満月は、ニッと笑う。

　
　演劇祭の売店で販売する、特製幕の内。
　幕間に食するための弁当である。
　簡単なようで、意外とこれが難しい。
　どのようなものを提供するか。それぞれの思惑とアイディアを持ち寄り「幕の内製作委員会」がスタートする。

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