最速王は誰だ！寝子島高校雑巾がけレース｜リアクション

最速王は誰だ！寝子島高校雑巾がけレース

●最後は笑顔で

「美穂戸さん、最後のラストスパートは見事でした！」
　剛がシダにマイクを向ける。
　レースを終えて、まだ熱狂冷めやらぬ北校舎３階ゴール付近。
　さきほどようやく全員がゴールしたところだ。
　優勝は、シダ美穂戸。

「ところで、『生春巻とやきそば』と叫んでらっしゃいましたよね、あれはどんな意味だったのでしょうか？」
「イメージ作戦　した。ゴールに　生春巻と　やきそばある　と思ったら　力湧いた。
　生春巻　どこだ？　やきそば　どこだ？」
　口の端からよだれを垂らしたシダがきょろきょろと見まわす。
「いや、残念ながら、生春巻もやきそばもあらへんけど……」
「コン（やだ）　シダの　胃袋　がまんできない！」
　どがっとシダの蹴りが炸裂した。
　可哀想にとばっちり以外の何物でもないのだが、実況の剛はその蹴りをまともに食らい、ダウン。
「シ、シンロイ（ごめん）」

「あー。実況がふたりともリタイアしてしまったから、解説の私、旅鴉月詠が代わって表彰式を行うよ。
　では優勝のシダ美穂戸さんへ、理事長から豪華景品の授与があります」
　あずさ理事長が大きな段ボール箱を抱えて現れた。
「『最速王は誰だ！寝子島高校雑巾がけレース』、優勝、シダ美穂戸さん！　おめでとう！」
　理事長からシダに、段ボール箱が手渡される。
「ありがとう！　中身なんだ？　生春巻と　やきそばか！？」
「開けてみたら？」
　きらきらした瞳で「ヴァン（うん）」と肯く。だが箱を開けたシダの表情は、みるみる曇った。
「……これ、なんだ？」
「優勝景品は、雑巾１００枚よ。この雑巾で今後も校内を綺麗にしてね！」
「えええーっ　食べ物が　よかった！」シダはがくりと肩を落とす。
「文句言わない！」

「あの、理事長」
「なあに、森君……だったわよね？」
「はい。じつは理事長にお願いがあります。今回のレースで、校内清掃に力を尽くしてくださった方々がおります。その方々にもなにか労いの言葉などをかけて頂けたらと思いまして」
「あら、そうなの？　誰かしら」
「恵御納夏朝さんと、八神修さんです。おふたりは、ギャラリーのみなさんにも声を掛けて、レースでの拭き残しなどを綺麗に掃除してくださいました。後方でのお二人の仕事も評価されてしかるべきかと思います」
「そして、あなたも、ね。わかったわ。じゃあ、三人には感謝の気持ちを込めてこれを」
　あずさ理事長は、シダが抱えていた雑巾１００枚の箱のなかから、３枚取り出すと、黒マジックでそこに『Thank you!』と書いた。
「恵御納さん、八神君、そして森君。サンキューの気持ちを込めて、サンキュー雑巾を授与します！　掃除を頑張ってくれてありがとう」
　
　こうして、拍手と歓声に包まれて、『最速王は誰だ！寝子島高校雑巾がけレース』は幕を閉じた。

◇

　後日。
　シダの元には、一枚の油絵が届けられた。
　気持ちよく駆け抜けるサオラのような姿が描かれたその絵は、月詠から優勝者へのプレゼント。
　レース中のスケッチを油絵に仕上げてくれたのだ。
　シダは、その絵から懐かしいベトナムの風を感じるような気がして、とても嬉しく思ったのだった。

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あとがき

担当マスター：笈地行／ハイペリー
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急遽、代筆を務めさせていただきました笈地です。
レース参加者以外の方々の協力もあり、
寝子高はすこし綺麗になった……のではないかなーと思います。
レース結果について、最後に残ったみなさんはアクションだけでは甲乙つけがたく、
最終的にはダイスの神さまの力をお借りしております。
それでは、『最速王は誰だ！寝子島高校雑巾がけレース』、お疲れ様でした！

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