修学旅行、寝台特急で行こう北海道！｜リアクション

修学旅行、寝台特急で行こう北海道！

●仕事の疲れも露天風呂で

「ふぅ～仕事のあとの温泉って、最高ね」
　ブリジット・アーチャーの言葉に、桜庭円と小山内海も頷く。
　クマの湯の仲居として一日中くるくると働いた彼女たちは、深夜になってようやくお風呂に入っていた。
「広いお風呂を少人数で使えるのは従業員の特権！」
「そうね～」
　海はさすがに湯船にスケッチブックを持ちこむわけにはいかなかったので、身振り手振りで会話に混ざる。
（ゆっくり浸かって仕事疲れを取らないと）
　そんなふうに海はふくらはぎのあたりを両手でマッサージしてみせる。
「そうよね、ずっと立ち仕事だったから、足がパンパンよ」
　ブリジッドも真似して白い足を持ち上げた。
　すでに館内は消灯後。お客さんたちはすっかりお布団の中で、脱衣所の前には準備中の札を下げてきた。すなわち贅沢にも貸し切り状態である。
「この温泉の効能ってどうなってたっけ？　美容とかあるのかなー？」
　そう言いながら、円はブリジッドの豊かな胸を見た。海もまた、同じところに視線を送る。
（ブリちゃんはそこそこあるからいいよね。……胸が大きく……なるといいなぁ）
　海は自分のまだ発展途中な胸をそっと触って。
　円もまた無言で自分の胸にぱちゃぱちゃとお湯をかけ。
「ん？　どうしたの、ふたりとも」
　ブリジッドは、ふたりがじいっと自分の胸と相対しているのを見ると、くすくすと笑った。
「ああ、これから大きくなるよ、ふたりとも……たぶん」
「たぶんっ！？」
　むきー！　と円がお湯をばちゃばちゃさせる。
「大きい人にはわからないんだよー！　女の子として胸が大きくなりたいって思うのは当たり前じゃないかー！」
「大きいかどうかより、誰に見せるかが問題じゃなくって？」
（だ、誰にって……！？）
　ブリジッドの言葉に海が真っ赤になってしまう。
「ねえ～？　刀？」
　ブリジッドは刀が男湯に入っているのを承知で、そんなからかい気味な声を男湯に投げかけた。

◇

　ぶくぶくぶく、と鼻までお湯に浸かりながら。
　御剣刀は、男湯をひとり貸し切りにも関わらず、なにやら妙な居心地の悪さを感じていた。
　女の子達の声は、最初っから丸聞こえである。
　湯気と夜空に響いて、なにやら楽しそうだ。
　……胸がどうとか、言っているけれど。
「海が、刀に覗かないでね、って言ってるわよ～」
　ブリジッドの声だ。
「覗かないよっ！」
　思わず答えてしまったが、すぐに女子たちの笑い声が聞こえ、しまったと思った。
「きゃはは、ぶりちゃん、やっぱり刀くん聞こえてるんだよっ！」
「刀も女の子だったら良かったのにね。そうしたら一緒に入れたのにねー」
「ぶりちゃんはすごいんだぞー！　もう、ぼんきゅっぼん、なんだぞー！」
「刀だってもし女の子だったら、きっと形のいい胸よ。だって鍛えてるものね」
「海もそう思う、だってー。聞こえてるー？」
　……完全に女子に遊ばれている。
　ぶくぶくぶくぶく、と刀は頭のてっぺんまでお湯に沈む。
　湯から上がるタイミングを失っているともいえる。
　むっつりだと思わないでいただきたい。
　変にテンションが上がると頑張っちゃうときがあるけれど、基本紳士な刀君なのだ。……多分。

　……適当に上がらないとのぼせちゃうぞ、と刀は思う。
　……明日も朝早いしな、とも思うのだけれど。
　……しょうがない。夜空が、綺麗すぎるんだ。……なんか、朦朧としてきたけど、な……。

◇

　真夜中。
　うまく枕大戦のあった女子部屋から脱出した敦志は、一旦は部屋に戻ったものの寝付かれずにいた。
　そこで、瞬間移動のろっこんで宿の屋根に上り、夜風に当たっていたのだった。
「４月によくわからない力手に入れて……」
　敦志は手を広げたり閉じたりしてみる。
「高校もあと一年……とはいえ、内容の濃い一年になりそうだぜ」
　夜空を見上げる。
　一筋、きらりと流れ星が流れた。

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