【バレンタイン】学生達のValentine's Day!｜リアクション

【バレンタイン】学生達のValentine's Day!

★ののことあおいと楽しく愉快な仲間達！（１）
●くまの名前は

　放課後、ののことあおいは陽気に順調に友チョコを配っているように見えた、が。
「うへ～、重いねー、あおいちゃん」
「うん……ちょっと困ったね」
　２人は自分の持っているリュックと紙袋を廊下に置いて話し合っていた。チョコを配っていれば自然と軽くなるだろうと思っていたのだが、案外お返しに貰ったりして、量としてはなかなか減っていなかったのである。
　あおいのろっこん＜カジバオトメ＞もののこの隣では難しそうだ。大量のチョコを前に２人でうんうん唸っていると、救いの声がかけられた。
「凄い量だな。手伝おうか」
「おー、修くん！」
「わあ、ありがとう修君！」
　それはまるでお姫様達の前に白馬の騎士が現れたようで。八神修の登場に、２人の顔がぱあっと明るくなった。

　修はチョコの配布を手伝う前に、彼女達の為に一仕事終えてやった。さすがにこの量はヤバイかもしれないと、職員室まで行って配布の許可を取ったのである。まあ寝子高だから爆弾でも配らない限り滅多な事ではそこまでお咎めはないが、これは女生徒２人への修の細やかな心遣いであった。
「よいっしょ……と」
　あおい達の前でリュックと紙袋を持ち、修は~~何とか~~……スックと立ち上がった。「大丈夫？」と心配するあおいに修はウインクで返す。
「こう見えても男だ。力仕事は任せろよ」
「おおー！　オトコノコすっごーい！」
　ののこが無責任にきゃっきゃとはしゃいだ。

　修のお陰で軽くなった２人の足取りは軽やかだ。特にののこは弾丸娘の勢いを取り戻し、あちこちでチョコテロを行っている。そんな彼女を温かく見守りながら修とあおいはのんびりと歩いていた。
「あ、そうだ。修君にもチョコあげるね」
　ふと気が付いたあおいは自分の手元に持っている紙袋から、チョコを取り出した。
「え？　いいのか？！」
　驚く修にあおいがふふと微笑む。
「いいに決まってるよ。手伝って貰ってるし。はい、どうぞ」
　あおいは立ち止まり、笑顔で修にチョコを差し出す。修は感激した様子で両手でそれを受け取った。
「ありがとう……！」
「一生懸命練習して作ったんだよ」
　ぺろりと舌を出し、あおいが茶目っ気たっぷりに言う。修は頷きながらチョコを胸に抱きしめた。
「その気持ちが嬉しいよ……食べるの勿体ないなぁ」
「えー、食べてくれなきゃ作った甲斐がないよ」
　笑って言うあおいに修は幸せそうに微笑んだ。
「うん。大事に食べるよ」
　そう言って修は名残惜しそうにあおいのチョコを自分のカバンにしまうと、そこから別の包みを取り出した。
「俺からも、これ」
「え、私に？」
「本来バレンタインはどちらからでもいいからな」
　修の言葉にあおいは包みを受け取る。「俺の作ったトリュフと、クマのぬいぐるみ」と修は言うと、少し照れ臭そうに言葉を続けた。
「クマはリボンを結んで名前をつけた日が誕生日だそうだ」
「へー、そうなんだ！　じゃあ早速名前考えてあげないと。ありがとね、修君！」
　嬉しそうなあおいを前に、修は「どういたしまして」と微笑んだ。
　……その名前が自分だったらいいのに、という小さな願いを胸にしまって。

　弾丸娘ののこはそんな２人を置いて、あちこちでチョコテロを展開していた。廊下で佇んでいた三宅葉月にも、
「先輩ー！　友チョコー！」
と半ば強引にチョコを渡していたののこ。振り向いたら２人がついてきていない事に気が付いてぷんすかと戻ってきた。
「もー、おっそいよ！　こんなんじゃ今日中にチョコ配り終わらないよー！」
　それもそうだとまた３人で歩き始めようとした時、後ろから柔らかい声がかけられた。
「ののこちゃん達……僕も一緒に配っていいかな……？」
　お、と３人が振り向くと。恵御納夏朝が大きく膨らんだカバンを手に立っていた。