僕の名前は梅戸有留(ばいと・ある)。皆からは「アルくん」の愛称で呼ばれている、寝子島高校に通うごくごく普通の1年生だ。
そんな僕の休日の楽しみ方が、短期アルバイト。寝子島の週刊タウン情報誌「Nyago Walker」が運営しているアルバイト紹介サイト、「Nyago Worker」に短期アルバイター登録しているんだ。
寝子島に関わる、メジャーなものからマニアックなものまでを取り揃えているのが、この「Nyago Worker」の他とは違うところ。晴天の日曜日、今回僕が選んだ短期アルバイトも、ちょっと変わった募集記事だった。
<アイス食べ放題!>池でパチャパチャするだけのお仕事です。
アイス食べ放題に釣られてしまった僕は、ついこのバイトに申し込んでしまった。
朝の耳福池のほとりに集まった僕たちアルバイターは、よれよれの服を着た管理人さんから説明を受けている。50代半ばくらいの、バーコード頭のおじさんだ。
「ほんとね、がっかりですよ」
大きなため息を一つ。
「ちょっと前にね、『耳福池に巨大竜の影。ミッシーあらわる!?』っていう噂が流れてね、私もね、これはちょっといけるんじゃないかって思ったんですよ。耳福池の時代が来たかなってね。確かに一時期は、カメラを携えたお客さんがたくさん来てくださいましたよ。あの盛り上がりはそうですね、初めてここにスワンボートが設置されて以来、30年ぶりくらいですかね」
確かにほんの数ヶ月前、ねこったーやタウン誌で耳福池に浮かぶ謎の影をとらえた写真が話題になった。でも僕の記憶では、1週間もしないうちに話題は沈静化したと思う。
「また元の売り上げに逆戻りですよ。もうね諦めました。写真のねつ造はやめます!」
あんたが仕込んだんかい!
「挽回策として思いついた案が、今回皆さんを募集した発端となるわけです。まず皆さんには何人かペアになっていただきます。あとは池の周りを散歩したり、あそこのボロッボロの今にも沈みそうなスワンボートに乗ったり、向こうの売店で売ってるアイスを食べたりしてください。もちろんボート乗り放題、アイス食べ放題です」
そんなことをアルバイターにさせて、管理側に何の得があるのだろう?
「そうすることでですね、耳福池のイメージを一新させるのです!」
なんでも、今日はこれから耳福池の来年度予算を決める偉い人が視察に来るのだとか。それに随行するようにして、地元のケーブルテレビ「テレビねここ」の撮影クルーも参加の予定とのこと。なるほど、話が見えてきたぞ。
「パワースポット的オシャレスポット的若者の聖地的な、新たなゾーンを開拓するのですよ。ですから、ペアが男女なら張り倒したくなるくらいラブラブに、同性どうしなら周りで見てる人が鳥肌立つくらい、青春ドラマばりの友情をさらけだしてください。皆さんの仲睦まじい姿をテレビ越しに見た人が、耳福池に対する印象を変えてくれます。それが口コミで広がって、いつかここは本当に、若者たちが集まるフレッシュネスな場所になると思うのです。ここに人が集まらないと、私の生活がまわらないのです。どうかよろしくお願いします。来年から上の子が大学にあがるんです」
平身低頭の管理人さん。そこまでお願いされたら、僕も日給以上の働きをしてあげないと。僕だって耳福池で遊んだ思い出がいっぱいある。たまには恩返ししないといけない。
さてさて、誰かとペアを組まないといけないみたいだけれど……誰か僕と組んでくれるかな。
「?」
ふと見た池の中央に、黒い塊が見えたような……気のせいかな?
一ヶ月以上ぶりの登場です。小西秀昭と申します。初めましての方、以後お見知りおきを!
「アルくんのバイトシリーズ」第2弾となります。第1弾はガテン系ブラックでしたが、今回はほのぼのホワイトなアルバイトです。あ、シナリオタイプはブロンズです!
皆さんは「Nyago Worker」から派遣されしアルバイター。今回は耳福池で適当にパチャパチャと、若さとか初々しさとか下心とかを、全開にすることでお金がもらえます。
*ガイドは梅戸君視点ですが、リアクションはいつも通りに戻ります。
【ペアになってアクション】
アルバイターの中でペアを作っていただきます。2〜3人、多くても5人程度が理想です(私的に)。男女の場合はカップルを装っていただきます。同性どうしでしたら、とことん友情を深めるフリを追求してください。アルくんと組みたい、というアクションも大歓迎です。特に希望のない方は、ランダムにペアを組ませていただきます。
グループアクションとしてあらかじめ計画を立てていただいても結構ですし、「あの人と絡んでみたい!」とアクションを提出いただければ、極力期待に添えるよう頑張りたいです。男性どうし、女性どうしでも、どうしてもという場合はそっち方面の展開も考えなくはないです。
「耳福池で告白すると恋が叶う」
「耳福池のボートに乗ったカップルは幸せになれる」
「耳福池で遊んだ仲間は一生の友になる」
そんな噂がまことしやかに流れて、耳福池が本当に福を呼ぶ池として人気を博すことになるよう、皆さんには頑張っていただきます。基本的にはワイワイやってくれればいいです。トークや遊びで盛り上がってください。
【耳福池】
登山道入口駅の近くにある、豊かな自然に包まれた大きな池です。寝子島マップではJ-4付近となります。周りでちょっとしたバーベキューくらいはできます。釣りも最近解禁日を迎えました。鯉や鮒が釣れます。ペダル式のスワンボートは、今回乗り放題。
一端にある売店ではアイスを売っています。バニラ味としらす味、そして二つを合わせたミックス味。少なくともバニラ味は美味しいです。アイスは今回食べ放題。ちなみに売店のおばちゃんは管理人さんの奥さんです。
【管理人】
皆さんがしっかり職務を全うしているか、たまに出没して見回るかもしれません。
【偉い人と「テレビねここ」撮影クルー】
耳福池の来年度予算の鍵を握る偉い人。それに従って「テレビねここ」撮影クルーも来訪します。彼らやテレビを実際に見る人へ向けて、耳福池の良さをあくまで自然にアピールしてください。
【梅戸有留】
短期アルバイトが趣味の寝子島高校1年生。今のところはただの「ひと」です。ろっこんの使用は、彼の見えないところ、もしくは「なんだったろう今のは?」とごまかせるよう、工夫した上でお願いします。
【謎の影】
ガイド中で触れていますが、耳福池には実は何かがいます。池の主か、正真正銘のミッシーか。気性は荒いです。スワンボートにぶつかってきたり、池畔で跳ねて散歩中の人に水をかけてくるかもしれません。気をつけてください。
これまで気になっていたけれど声をかけられなかった寝子島メイトに、アクションをしかけるいい機会になればな、と小西的には思っています。もちろん兼ねてからの仲良しグループの交流を深める場としても、大いに利用いただきたいです。ご参加お待ちしています。