ダンボールハウスの主は言いました。
「この間、おもしろいカードをもらったんだよ。絵柄がとっても綺麗なのっ。
『シマリス書店』さんに、このカードについて載っていて、
引けばどんな事でも、いろんな事が分かるんだって。
すごく面白そうだったから、何冊か解説書も買ってみたんだよっ。
(非常に初心者の気配がする)
それでも、持ち主によっては外れたりもするみたい……
でも、そんな時には魔法の呪文があるって、辻占いをしているおじいさんが教えてくれたの。
「当たるも八卦! 当たらぬも八卦!」
叫んでおけば大丈夫なんだってっ。それでも良ければ占いの勉強も兼ねて、少し占わせてくれないかな?
(テーブルには、絵柄が綺麗なカードが置いてある)
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(端っこに、変なカードが置いてある)
あ、それね。解説書のおまけでついてたのっ。
絵柄が『あんまりにも、へん』だったから、ついカードの方がほしくなっちゃって……
『シマリス書店』さんは何でも売ってるんだねっ。
こっちでも占えるけど……結果もへんだから気をつけてね?
※どちらかお好きなカードをお選びください。綺麗なカードはそれなりに、変なカードはそれっぽい結果がでます。
(飲み物を飲んで息をついて)
祖父母がうまく手を回してくれたのか、こっちに来てからは実家の干渉は殆ど無くて……まあ節目には帰ったりしたけれど、無理に跡継ぎの話とかはされなくなっていたよ。
私は凄く生き返った気がした。
好きなことをして、自分で何をするか決めて過ごして……。
進学した友達とたまに会うと、もっと勉強したかったなぁって思うこともあるけど、
勉強はどこにいたって、何歳でもできるしね。
あ、従弟はもういじめてないよ。
従弟がやっぱり祖父母の計らいで寝子島に来た時に、ああこの子も同じだったのかなぁってちょっと思ったりもした。
……でも、普段は忘れているけど、たまに思い出すというか……
『これは特別に猶予が与えられているだけなんだ』って自覚はあったんだよ。
跡継ぎ問題が解決したわけでもないし、父が諦めたとも思えないから。
いつか、父が選んだ人と結婚させられるんじゃないかなとは思ってた。
(ちょっと言葉を切って、そして少し恥ずかしそうに)
……けど、私には寝子島を離れたくない理由ができたの。
父の跡を継ぎたくない……というか、父の決めた相手とは結婚したくない理由ができたの。
私が跡継ぎとして挫折してもいつか婿をとってその人を、その人との子どもを跡継ぎにって父が考えてるって聞いたけど、絶対嫌だって思うの。
……。
…………私、寝子島で好きな人ができたんだ。
私なんかには勿体無いくらい、とってもとっても素敵な人。
まだ付き合っているわけでもなければ将来の約束なんてもちろんしてないけど、
……好きなの。
(頬を染めて俯いて)
でもね、絶対に父は許してくれないんじゃないかって思う。
祖父の顔を立てているのかわからないけど、今は何もしてこない。
でも祖父は海外に行っていることが多いから、父がその気になれば私を力づくで連れ帰るくらいできると思う。
私は、私が好きなあの人には、うちのことで余計な迷惑かけたくない。
でも、私は父に抗う決定的な力を持っていない。
それに……跡継ぎ問題がこじれたり、私が跡を継がなかったことで、会社に、グループに尽くしてくれている人たちに不利益な自体にはしたくないと思ってるの。
でもでも、私は…………(言葉に詰まって)
あれもこれも欲しいってねだっている子どもみたいなことは判ってるんだ。
片方を立てると片方は立たない、それも頭では判ってる。
私が我慢すればいいって思ったこともあるけど……。