ダンボールハウスの主は言いました。
「この間、おもしろいカードをもらったんだよ。絵柄がとっても綺麗なのっ。
『シマリス書店』さんに、このカードについて載っていて、
引けばどんな事でも、いろんな事が分かるんだって。
すごく面白そうだったから、何冊か解説書も買ってみたんだよっ。
(非常に初心者の気配がする)
それでも、持ち主によっては外れたりもするみたい……
でも、そんな時には魔法の呪文があるって、辻占いをしているおじいさんが教えてくれたの。
「当たるも八卦! 当たらぬも八卦!」
叫んでおけば大丈夫なんだってっ。それでも良ければ占いの勉強も兼ねて、少し占わせてくれないかな?
(テーブルには、絵柄が綺麗なカードが置いてある)
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(端っこに、変なカードが置いてある)
あ、それね。解説書のおまけでついてたのっ。
絵柄が『あんまりにも、へん』だったから、ついカードの方がほしくなっちゃって……
『シマリス書店』さんは何でも売ってるんだねっ。
こっちでも占えるけど……結果もへんだから気をつけてね?
※どちらかお好きなカードをお選びください。綺麗なカードはそれなりに、変なカードはそれっぽい結果がでます。
ああ、有難う、浅山。終わったら1秒でも早く呼びに行くよ。
君の言う『大丈夫』はそのデッキ2つの間、つまり神妙さと珍妙さを行き来してるんだね…。
(一度お茶を飲んでから腰を下ろし)
…うん、本当に纏まらないから訊きたい事とそれに関わりそうな話をざっくりとだけ話す事にする。
占いをする側である君にとってはちょっと違和感かもしれない言葉になるけど、訊きたい事があれば適宜言ってほしい。
ひとつは【僕の将来の職】について。
(少し迷った顔をした後思い切った様に)
……平たい話、実家の甘味処を継ぐのが嫌でね。
僕は、3年間の高校生活だけは自由にさせてほしいと逃げ出して寝子島へ来た。
これが最後の自由だと思って。卒業したら帰って店を継ぐって決めて。
でもね、やっぱり帰りたくないんだ。否、正確には『帰属したくない』が正しいかな。
けれど、今までずっと僕はいずれそうなるって思って来たから、「じゃあどうする?」って思っても何も出てこないんだよ。
占い結果で出てきた方面を妄信して進むことはないだろうけれど、考えようにも選択肢どころか目の前の画面が真っ暗過ぎて何も無いのは困る。
それともうひとつ。
僕、昔から「誰に置いて行かれてもいい」って思って生きて来たんだ。
先述の様に逃げてきた筈なのにイマイチ開放的になりきれず今も怯えたままなのと、この猶予期間が終わる時嫌とか辛いとか喚き散らさない様に、が理由なんだと自分では思ってる。
その所為かな、いずれ連れて行かれるからと座敷牢に座ったまま停滞し続けてる自分が居るんだ。
当たり前だけれど前へ進んでいく友人、…友人でええよね、…うん、友人に曖昧に微笑んだまま置いて行ってもらおうとする…本質的には孤独だから体感時間が長くて、まるで妖の様な自分。
それは切り捨てたらもう僕が僕で無くなるほどに大きくて。かと言って全て表在させてしまったら僕はそう遠くない内に自ら生を閉じる道を選んでしまうと思う。
【そんな自分とどう付き合って行けばいいのか】が知りたいんだ。
僕は幼少の頃から何か大事な物を奪われたり捨てられたりしてずっと逃げて来たのけれど、その代わり抱えてきた物を自分の選択によって置いてくる事はしなかったから、こうして話が纏まらない代わりに出すべき答えもちゃんと此処にあると信じたい。
維都月には整理を手伝ってもらう様な形、かな。カードは此方を選ばせてもらうね。
(そう言って綺麗な方のカードを指し示し)