旧市街、参道商店街にある手打ち蕎麦屋『すすきの』
暖簾をくぐって中へと入ってみれば、出汁の香りか、天麩羅の香りか。
席に座って出されたお茶を飲みながらメニュー表を覗いてみると、
筆で書かれたしっかりとした文字が目に入ってきます。
・かけそば
・鴨南蛮
・天麩羅そば
・月見そば
・ざるそば
・天ざるそば
・寝子島そば定食…日替わりのそば定食
・サンマそば定食…サンマの蒲焼がのった掛けそば定食
その他にも季節ごとのメニューもあるようです。
お気軽にご注文下さいませ。
「あなたのそばに蕎麦屋すすきのーすすきのー」
孫娘の五月が接客の合い間にテーマソングとばかりにおかしな調子の歌を口ずさんでおりますが、
深い意味はありません。恐らく気分です。そして仕様です。
>千子先輩
お蕎麦大好き!(カッ!)
……はっ!失礼致しました。お蕎麦大好きとお聞きして思わず。ふふ。
そして素敵にリズミカル。蕎麦屋すすきの、薄野五月。
思わず踊りだしたくなりました。ダンシングダンシング。
ふっふ。では、その御期待を裏切らぬような、
美味しいお蕎麦をお届けせねば…!
……と。少々失礼致しますー。
(店主に呼ばれて一度テーブルから離れ)
(少ししてからトレイに、
『サンマのかば焼きが乗った掛け蕎麦、白飯、
山菜(タラの芽とフキノトウ)の天麩羅、そば饅頭、桜餅、漬物』
の乗ったサンマそば定食と蕎麦饅頭を持って戻って来た)
お待たせ致しました。サンマそば定食になりますー!
ごゆっくりお召し上がり下さいませー!
>大山田さん
はい。こちらがすすきのの天麩羅そばになります……(ごくり)
(天麩羅蕎麦で正解だったか……!?と、心の中でドキドキ)
(そして大山田さんの様子を固唾を飲んで見守りながら)
おお。実に、実に見事な食べっぷり。そして見事な集中力。
……とと、それと、こちら、良かったらお召し上がり下さいませー!
(と言いながらひょいとテーブルにそば饅頭と桜餅を置いて)
(しかしこれ程見事な食べっぷりの方の顔を
忘れ……いえ、思い出せ……いえ、浮かぶ!そう、浮かばないのは何故でしょう。
私の脳内のマル秘蕎麦ファイルもまだまだ未熟)
(そして大山田さんの食事から聞こえるリズムに思わず)
すすきのーのー。フンフーン。
あなたのそばにーそばにー。フンフーン。
(と楽しそうに鼻歌を歌いながら、お茶を注いだ)