崩れかけた廃墟の中、薄暗い和室の畳の上で小さな子供が体を丸めて眠っている。
差し込む夕日に焼け、ところどころ黴によって色を変えた畳の上には古ぼけた一冊のアルバムが開いたまま置いてあった。劣化したビニールポケットの中の写真はすっかり褪せて、中身を読み取ることはかなわない。
けれど、広げられたアルバムのその分厚さと、それを見たまま眠りに落ちた子供の顔があんまりにも幸せそうだから、きっとこのアルバムはかつて幸福をそこに映していたのだろう。
その幸福な記憶を夢に見ているのか、眠ったままの子供の顔がやわく微笑む。
唇が小さく動いて、んへへ、と笑う声が僅かに響いた。