石造りの2階建て、その1階が店舗スペースである。
日の差し込む一角が外から中が見えるショーウィンドウにはサンプルの箒が飾られており、申し訳程度の客引きとなっている。
店内は開放的で存外物は少なく歩きやすい、シンプルでナチュラルなテイスト。
魔法具の材料となる素材のサンプルが宝石箱のような物に入った状態で設置されている円形の大きめなカフェテーブルが空間の中央にあることと、奥に元は喫茶かバーでもやっていた建物なのかカウンターテーブルがあること、そしてお試し用の品を収めたガラスケース程度。
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入口には、
【小さな道具、お買い求め頂けます】
【魔法の手助け致します】
・小さな素材を貴方に合った形に加工します。
箒の材料でも、貴方が持っているものでも、此処にあるものでもかまいません。
星の力に『形』を持たせる際の補助に。小さな変わった小物として。お気軽にご相談下さい。
・店主が趣味で作った道具達もお譲り致します。
如何せん、癖が強い子が多いこととは思いますが気になった子、手に触れてみたい子が居た場合はお気軽にお申し付け下さい。
と記されたボードも置いてある。
うーん。持ち主が居る子の方が希有と言うのもありますから、難しいところではあるんですけれどねー。
道具は自分で動ける子の方が圧倒的に少ないですし、どうしても座り込んで待ち人を待つだけの迷子になってしまいがちなのかもしれません。
(カフェテーブルの脇に立ち、箱の中身をひと撫でして)
靴、ですか。
(きょとりと目を瞬かせて)
ヒールにするには少々鋭利ですが、エッジ部分だけでしたらとは彼が言うかもしれませんねー。
夜を切り裂く暁の。朝を呼ぶ朝焼けだったら、歓迎されそうな気もしますし。最後の夜空の余韻を切って朝を呼ぶ・・・先ほどの彼誰(かわたれ)のブーツと同じ刻を生きられそうなので、もしこの子たちが靴同士だったのなら案外仲良しさんなのかもしれません。
あとは、そうですね。今言ったものとも更に違う生を歩むと云うのならば、眠気の尾を切ってお寝坊さんを起こす時計の針になれるかもしれませんし、悪い縁を断ち切るお守りにだってなれるかもしれません。
もっとも、まだこの子は鋏のままなので、どうしても「かもしれない」の話になってしまいますが、未来が沢山なのもなんだかわくわくしますよね。
この子はこの子のまま、変わったり変わらなかったり出来るんですからー。
(楽しそうに色々な「もしも」の話を語りながら)