石造りの2階建て、その1階が店舗スペースである。
日の差し込む一角が外から中が見えるショーウィンドウにはサンプルの箒が飾られており、申し訳程度の客引きとなっている。
店内は開放的で存外物は少なく歩きやすい、シンプルでナチュラルなテイスト。
魔法具の材料となる素材のサンプルが宝石箱のような物に入った状態で設置されている円形の大きめなカフェテーブルが空間の中央にあることと、奥に元は喫茶かバーでもやっていた建物なのかカウンターテーブルがあること、そしてお試し用の品を収めたガラスケース程度。
*
入口には、
【小さな道具、お買い求め頂けます】
【魔法の手助け致します】
・小さな素材を貴方に合った形に加工します。
箒の材料でも、貴方が持っているものでも、此処にあるものでもかまいません。
星の力に『形』を持たせる際の補助に。小さな変わった小物として。お気軽にご相談下さい。
・店主が趣味で作った道具達もお譲り致します。
如何せん、癖が強い子が多いこととは思いますが気になった子、手に触れてみたい子が居た場合はお気軽にお申し付け下さい。
と記されたボードも置いてある。
あ、まだ見つかってなかったのか。
(持ってこられた箱を覗き込んで、張り紙の内容を知っていながらもう一度読み直し)
持ち主をとっかえひっかえするよかいいと思うけど、長らく主無しの迷子みたいな奴だよな。
コイツは流石に欠片レベルにバラして何かに組み込むっつーわけにもいかないだろうし…そもそもうちの店の物は大抵“そのまま”使わなけりゃ意義を損なうもんばっかりだしさ。
(ふーむ、と腕組みして首をひねり)
…でもこう、性質を損なわないっていうか、何かに移してやれたらいいんじゃないかとか思うんだけど。
前にあった、彼誰のブーツみたいに、靴に仕込んでやったら、とかさ。…スケート靴にもなんねーか。湖面の鏡に映した夜を限定的に切り取るくらい?