店内には客が見やすいように大きめの文字で書かれたメニュー表のようなものがある。
基本形態であるオーダーメイドに関する説明のものと、既存商品一覧の2つ。
※既存商品は基本一点物の為、売れた場合は無くなりますのでご了承ください。
【箒】
・或る少女の願いを込めて伸ばした髪を使った箒。柄と芯にはその少女が持って居たキャンパスとイーゼルが使われて居る。叶った願いのお礼にと預けられた穂のため、箒自体の力は弱いものの空に夢を描くように柔らかく飛ぶのが特徴。ラプンツェルの絵筆の箒とも呼ばれる。
・空を泳ぐ蛇の鱗を柄に使った箒。地に足を付く事をあまりせず、穂はいつも浮き足だっている。雨の日は吸い込まれるように木陰に隠れるのが特徴。ごく希に地面に穂を降ろした時、その地面の接点から空に虹を描く事が出来る。その虹は吉兆の印だと言われる、瑞兆の箒。
・朝焼けの雲の切れ端を穂に、朝日を見たがる夜更かしの白い星の子達を柄にしまい込んだ籠の箒。視界が悪い雲海も潜るように泳ぐことが出来る。柄の材質に春を待つ樹の葉から貰った氷達を使っているため長時間飛行すると氷で編んだその籠が箒に触れる者の爪を例え主であろうとも雲の色に染めて行くので注意。籠の箒にして加護の箒。
・悪戯に吐いた冬の白い溜息を集めて穂を作り、サクサクと脆い霜柱を柄の中心に踏み固められた固い粘土で補強した通学路の箒。決められた道を寒さに負けず速足で通う冬の子供たちのように来た道と帰る道を間違えずに往復する事が出来る。コンパス要らずの箒だがイレギュラーな事態には弱いためご注意を。オススメは座布団を柄に巻いて乗馬時の鞍のようにして乗ること。
・風が強い日に、空を渡っていたら木の枝に引っかかってしまった海月を集めて形にした箒。強く握ると崩れてしまうような柔らかさを感じるが、触感と外見にそぐわず案外強い。
地図を覚えず自由気ままに風の吹くまま空を揺蕩う放浪の箒。帰り道が心配な方は芯に珊瑚の木の枝を使うと良い。
・大切な子を探して、探して、探し続けてそのまま影になってしまった思いを匿って穂にした箒。箒自体が隠れ家であり、帰り路。本当の道なんて、大切な子だってもう見つからない。
唯、自分の居場所を守ろうとするように穂に住まい箒と箒の持ち主を守る。居場所を壊す者には牙を剥くためご用心。