店内には客が見やすいように大きめの文字で書かれたメニュー表のようなものがある。
基本形態であるオーダーメイドに関する説明のものと、既存商品一覧の2つ。
※既存商品は基本一点物の為、売れた場合は無くなりますのでご了承ください。
【箒】
・水面を漂う水草の穂の箒。高くは上がれないが水面ぎりぎりを浮かびながら、波にも浚われず水に爪先を水にひたしてゆったりと飛ぶことが出来る。夏が好きな、水面の箒。
・月を映した水盆に小鳥達の羽を月の満ち欠け一周分浸したものを芯とした万人に乗りやすい箒。羽のように軽く、軽やかに飛ぶ。穂は「止まり木たる我々が居ない場所だなんて」と海を哀れむ木々が流した涙で育った箒草を使用しているため、陸地では十全だが海風、海上とは仲が悪いのがたまに傷。それでもこの箒で海を渡りたい時は海鳥の羽を一枚、穂の中に忍ばせておくと良い。
・降りる場所を見失った小雨をブローチに詰め込んで、大地に根を張る薔薇の子の噂話を織り込んだリボンの真ん中に添えて柄を美しく飾った箒。その箒で空へ浮かべば、その時々の地上にある一番美しいものをそっと貴方に教えてくれるかもしれない。地に足着かないふわふわとした空と地面を行ったり来たりの危なっかしい飛び方をする箒。
・帰る人を待つ朽ちかけた温室の長椅子と、その椅子をずっと見続けていた温室の植物達を穂と柄に使った箒。柄は長椅子の素材を多く使ってあるため脆く危うい。その危うい柄を硝子越しの陽の光で編んだ布を巻いて補強してある。帰り人を探すように永い時間を休まず飛び続けることが出来る箒。仄かに暖かくも感じるが触れれば冷たい。
・大切にされてきた古いお屋敷の垣根の木と外壁を穂と柄として、その家の門扉の鍵を芯とした堅固な箒。少々、融通が利かないほどに頑丈で真面目。一度箒が主を主と認めたら、鍵開けの魔法でさえもその箒の主を違えることは出来ない。一芸に秀でて居るわけでは無いが、愚直で堅牢な守りの箒。
・彗星にぶら下がり旅を気まぐれにやめた星の子が、地上で星砂になったものを固めて作った『砂のお城』の一部を柄に使った箒。穂にはその彗星を見上げた時に漏れた感嘆の吐息を使っている。白い穂で夜空をなぞる、『箒雲』を描く白い絵筆の箒。コップ1杯、一晩星を映した水を柄に含ませるとより堅く、そして軽やかに空へと浮かぶ。