小萩です。
このトピックでは、PCさんの外見や雰囲気などを、小説の登場シーン風に描写します。
出演希望のPCさんは小萩宛に【登場シーンSS出演希望】の件名でメッセージを下さい。
どんなところを・どんなふうに描写してほしいか、本文でリクエストをいただければ参考にします。全部おまかせでも請け負います。
内容によっては、時間がかかったり順番が前後したりする場合もあります。
期間は特に設けませんので、気が向いたら、どうぞ。
受付をお休みする場合もありますので、その時は再開を待っていてください。
なお、プレイヤーさん一人につきPCさん一人でお願いします。
出演:樹雨蓮太朗(RKM003292)
CDショップ『Pioggia d'aprile』の看板を私は見上げた。私はあるサックス奏者のCDを探していた。決して有名でなかった彼の唯一のCDは、極めて少数しか製作されず、ネットオークションですら出品を見た事がなかった。
自動ドアが開き、店内の音楽が漏れ出てきた。アナログ音源時代のジャズナンバーだった。
店内は決して広くないが、まだ新しく清潔な印象を受ける。私はジャズコーナーへ向かった。
店員らしい男が棚の整理をしていた。年齢は三十代半ばか、もう少し上かもしれない。細長い指先で、すっと一枚の盤を抜き取る。
CDのジャケットが目に入り、私は息を飲んだ。不機嫌そうなジャケットの顔写真は、間違いなく、私の探していたサックス奏者だった。
「すみません!」
私は思わず大声を出していた。男がゆるりと振り向く。眼鏡の奥で長いまつげが瞬いた。
「いらっしゃいませ」
愛想良く応じた店員に、私は勢い込んで言った。
「そのCDが、ほしいんですが」
言ってから思い至る。なぜこの店員はCDを棚から出した?どこかから注文が来たからではないのか?
「いくらでも払います。先客にキャンセル料が必要なら、それも私が払います。ですから」
「困ります。お客様」
私が必死に言いつのると、店員の声音が変わった。先ほどから一転し、今は冷厳ささえ感じる。
「こちらの商品はすでにご注文をいただいておりますので、お客様にお譲りはできません」
「金なら……!」
「当店では定価しかいただいておりません」
がくりと私は膝を折る。
「お客様」
店員が声をかけてきたが、返事をする気力もなかった。
「もしよろしければ、再入荷の際にご連絡いたしますが」
店員の無知さに私はあきれた。このCDが再入荷など、されるわけがない。しかし次の言葉に、私は再び目を見開いた。
「もちろん復刻版になりますが」
「復刻されるんですか!?」
「はい。来月中旬の予定です」
私は舌を巻いた。この店員は無知などではない。膨大な新盤情報の中から、こんなマイナー盤の復刻情報など、普通は把握しきれない。
「名盤ですからね」
「ええ、ええ!そうなんです!」
事も無げに答える店員に、私は頷くので精一杯だった。
「素人芸で恐縮ですが、私もサックスを吹いていまして。彼の曲はいくつか演りますよ」
この男の演奏が「素人芸」であるはずがない。私はそう直感した。