森の奥、白薔薇に覆われた教会へと足を運び
打ち破られ千々に砕け散った
ステンドグラスの破片が散乱する床に膝をつき両手を組んで
何処にもいない誰かへと祈る。
どうか。どうか、お願いします。
私の愛しい人達の幸福をお護り下さい。
それは何処までも大きなもので。
何処までも重いもので。
その全てを抱えるには私の手は余りに小さく、余りにも無力で
私一人の力では到底護り切ることは出来ないだろうから。
この想いが罪だとしても、それでも私は構わないから。
願うことの代償として、どれ程の罰を受けることになるとしても
もうそれすらも構わない。
願いが叶うのなら、この身と心がどうなろと構わない。
悪魔に魂を売り渡すことすら、私は嬉々として行おう。
皆が幸福に包まれ、穏やかに笑ってくれるのならば
私はそこにいなくても。
永遠に続く孤独の牢獄に幽閉されることになろうとも
どうしても願いを叶えたい。
こうして祈る私を目にした人々は
その胸に何を思うのだろう。
悍ましく醜いものとして
私に嫌悪と軽蔑を向けるのだろうか。
それはとても心が痛くて、苦しくて
酷く恐ろしいことだけれど
きっとそれこそが、願いの代償に受ける罰なのだろう。
祈る為組んだ手を解き、拳を床へと打ち付ける変わりに
甘く痛む胸に手を当ててて
棄てられ忘れ去られた場所で一人、静かに笑った。