灯 斗南はいたって無趣味な男だ。音楽にもオシャレにも部活動にも勉強にも興味がない。そんな彼だが毎週必ず欠かさず見ているのが特撮ヒーローもの、「マスカレイダー」シリーズである。元々は昭和に作られたマスカレイダーを平成になって復活させるとそのシリアスな展開と主人公ダイゴ役の俳優の熱演から人気沸騰、以降シリーズ化されている。
第五幕 「演技の幅」
イフリートが起こした火災の痕跡を調べる警察。その中に眼鏡を掛けた長身の若い刑事がいた。
「これほどの大火災なのに発火物の痕跡すら残っていない…それに消防隊の証言では消火のため中に入ろうとしたがまるで見えない壁がそこにあって先に進めなかったと言う…。」
そこに中年の刑事がやってきて声をかけてくる「平坂、どうだ、何か手掛かりは見つかったのか?」
「いえ、先輩。何も、何一つ手掛かりになるようなものはありませんでした」
「そうか、まったく最近はおかしな事件が起きるな。まあとりあえず後は鑑識に任せるとしよう」
「いえ、俺はもう少しだけ調べてみます。」「やれやれ、お前は本当によく働くな。そんなに頑張ってばかりじゃ身がもたないぞ?」「…すいません、でも、俺の気が済まないんです」
平坂と呼ばれた若い刑事は中年の刑事が警察署に戻るのを見送って再び現場を振り返る。
「明らかに異常な事件が、まるで人知を超えた何かによって引き起こされている、そんな気がする…」