黒い絵の具で塗りつぶしたかのような空には、数え切れないほどの星々がきらめいている。
そこにぽっかりと浮かぶ月は、静かに揺れる暗い海を、優しく照らす――そんな、とある夜の砂浜。
※雑談トピックです。ご自由にお話しください。
※時間帯は夜~夜明けあたりまで?
月光は嫌い、海も嫌いかな。では何故こんな所に?嫌いなものに近寄る習性でもあるのかね
それとも慣れる為の訓練?
月の光は神秘を起こす。夜の青い海は幻想的でインスピレーションを刺激する。
君は育ちざかりだ、不眠症は辛いだろう。こんな老いぼれでよければ話し相手になるが……
ああ、僕の心配はいらないよ。老い先短い身、自分の事はよくわかっているつもりだ
星ヶ丘の出身かな?あそこはいい所だ。
丘に立ち並ぶ瀟洒な白亜の家々は地中海の保養地の景観を思い出す。……君にはいい思い出がないらしいが
ヴァネツィアは芸術家の都だった。とても美しい街だったよ……目を瞑れば潮の香りと共に鮮やかに甦る。ゴンドラ乗りの陽気な歌声もね
君はまだ若い。過去を振り返るには若すぎる。
……だがね、失った人を悼む行為すら赦されない人生などというものがあれば、あまりに無味乾燥じゃないかな
そんな乾いた土壌からは何も生まれはしないよ
ああ、申し遅れたね。僕の名前は木原一颯、元はピアノ職人だった
寝子島には楽器作りの工房があってね……そこで仕事をしていた
僕の作品を見たい?……申し出は有り難いが、もう引退してしまってね(肩を竦め)好事家の間に出回っている一部を除いて、手元にも置いてないんだ
落ち着いた革の表紙か……光栄だね。さしずめ貴方は黒い鞣革の表紙かな?
おや、ロマンスの話はいやかい?期待したのだが
ならば無理にとは言わないが……こんな夜だ、月の光に酔い痴れて口が軽くなってもいいじゃないか