ゾンビシナリオ中に、握利平が思い返した映画
5
今後の相談を持ちかけようとした俺を制して、ますます顔色の悪くなった相棒が語り始めた。
大学で出会った頃の事
仕事場で再会した時の事
2人でバカをやり、警察に追われた時の事
ビーチでナンパに失敗して、バカンス先で2人きりだった事
「死亡フラグって知ってるか?」
優しい俺が教えてやると、突然、相棒はベルトを外してケツを晒した。
鍛えられたムキムキのケツには赤く、歯型がついていた。
「もう、死ぬからな。大丈夫さ」
相棒は哀しそうにケツをしまった。
俺はマグナムの銃口を、相棒の頭に向ける。
「酷い顔だな」
相棒が言う。
「お互い様だろ」
俺が返す。
「薄毛のお前の方が酷いに決まってる」
相棒が笑う。
「老兵は死なず、だ。あの世に1本持って行くか?」
俺が笑う。
「いらないよ。大事な、戦友だろ?」
相棒が泣く。
俺は、黙って、マグナムの撃鉄を起こした。
「なあ、ジョン。一つ言い残した事がある」
「なんだ?」
ハンサムな顔を台無しにして、相棒が告白する。
「俺、ゲイなんだ」
ーーーー。
乾いた破裂音が、続いて重い物が倒れる音が、室内に響いた。
「知ってたよ」
俺は銃を置き、硝煙臭い手で、顔を覆った。
俯く俺の背後に、動かなくなったはずの、元警備員が立っていた。