『MIBU』と書かれたシンプルな掛札のかかった扉がある。
5階、エレベーターから出て左手一番奥。
5階、東階段を上って目の前。
中に入ると、広い間取りの玄関と、その先に続く廊下。廊下の先にはこれまた広いリビングが。
花を生けた花瓶、絵画、各種インテリアが置かれたその部屋は綺麗に整えられており
埃ひとつない、とは比喩にもならないほど。
玄関前の廊下から分かれる客間、その部屋の一番奥にあたる寝室ですら、日々の掃除を怠ってはいない。
そう、『彼女』の性格からはとても想像がつかないほどに。
キッチンから香ばしい匂いがする。
その匂いの主は、彼女の作ったクッキー。もはや、彼女の日課となっているものだ。
来客があれば、気だるそうに玄関へと向かう。意外にも彼女は綺麗好きだったのだ。
「あぁ、いらっしゃい……ふあぁ…ねむ」
―――尤も、その身嗜みを除けば、だが。
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壬生 由貴奈の個人部屋トピックです。
原則、非入居者の方を含めどなたでも入室可能です。
彼女が何かしらのんびりやってますので、ご自由にお入りください。
(ふーん、と焼きあがったクッキーを皿へと移しながら話を聞いている
バニラ、チョコ、キャラメル、抹茶、ココア、etc...
10種類弱のクッキーが盛り付けられた皿を持ってソファへ)
前から言ってるけどさぁ、うちは別に優等生でもなんでもないよ。
試験だけできたって、世の中のために振るえる力なんてごく僅かなんだから。
相変わらず運動はからっきしで、体育は筆記試験すら赤点になっちゃう始末だしねぇ。
(はい、と皿に盛られたクッキーのうち一枚を取って目の前へ差し出しながら)
…ま、中学のころの思い出話になっちゃうから、詳しくは省くけど。
もう2年も高校で待ってれば、ちょっとは面白いことが起こるかな、ってところだねぇ。
けどまぁ、せっかくお金かけて学校行ってるわけだし、ムダに2年も過ごすのはなんだかね。
というわけで、迷ってる途中。
(深呼吸をしながらソファに寄りかかり、なにとなく天井を見上げる)