こちらは展示物の紹介トピックになります。
恐れ入りますが、管理人以外は書きこまないでください。
(アレは一体何なのだろう?)
入口脇に設けられたロビースペースで、アナタはお茶を楽しみながら、会話の合間に中央の巨大な機械を見つめる。
吹き抜けの天井に達しようかという本体から、大小数個の球体とアームが伸びている。
「気になりますか?」
アナタの視線を読み取った館主が、嬉しそうに話出す。
「アレは私がコレクターになる切っ掛けとなった機械。オーラリー、日本語では天球儀と呼ばれるものです」
中央の太陽を模した灯りから、暖かみのある光が広がる。
周囲には水星、金星、地球、火星、木星、土星が配され、それぞれを無骨なアームが支えている。
良く見れば地球の周りには、小さな月も確認出来る。
「これは惑星の公転を表す物です。年代は不明。天王星が無いので、古い物であるのは間違いないですね」
館主が使用人に合図し、照明が落とされる。
館内を照らすのは中央の太陽だけとなり、惑星達は満ち、或いは欠けた月の様に影を纏う。
館主が指を鳴らすと壁や天井に星々が映し出され、宇宙から太陽系を見上げたかの様な不思議な光景が浮かび上がった。
「東欧の旧家。元は貴族だったと聞いています。その家の地下に、この天球儀は在りました」
館主が懐かしげに言葉を紡ぐ。
「噂を聞いて訪れた私が見たのは、土台、数本のアーム、箱に納められた球体達。
家長はソレが天球儀であると知っていましたが、組み立てた事は無い、と言っていました」
何故か分かりますか? 館主は問うて苦笑いを零す。
「間違ってるから。そう、伝え聞いて来たそうです。太陽が真ん中に在るなんて可笑しい、と」
いやはや……、と続く言葉を紅茶で飲み込む。
「家長を説得し、天球儀を譲り受けた時に私の機械収集は始まりました」
再び懐かしそうな表情に戻った館主は、愛おしそうに居並ぶ機械達を見渡す。
「6つの惑星と月の公転を、この規模で表しているのです。部品も大きく、修理に時間がかかる物ばかり。
元々、時計は好きでしたから、自分で修理もしていたのですがね。それでは知識が足りない」
「参考にと、古い機械を集めるうちに数が増えすぎてしまいました」
館主は再び、天球儀を見上げる。
「色々ありましたが、ようやくこの島で天球儀は本来の姿を取り戻したのですよ」
再び指が鳴ると、天球儀がゆっくりと動きだした。
星の海に浮かぶ太陽の周りで、惑星達が円を描く。
その中で、青い地球が月と寄り添うように回る。
地球と月の輪舞を、館主は幸せそうに見ていた。