こちらは展示物の紹介トピックになります。
恐れ入りますが、管理人以外は書きこまないでください。
幅は1mほどだろうか。
赤みを帯びた木製のの台座に、仮面を着けた貴婦人と紳士の人形が立っている。
「フランスの旧家より譲り受けた物です。保存状態が良くて、オーバーホールだけで動いてくれましたね」
言いながら館主がネジを巻き、レバーを下げると軽快なワルツが鳴り響く。
と、仮面の紳士が動きだし、優雅な仕草でお辞儀をする。
貴婦人も淡緑のドレスの裾をつまみ、それに答えると、二人は手を重ね、紳士が華奢な腰をそっとサポートする。
無機質な真鍮製のシリンダーが爪弾く櫛歯は、美しい音色で辺りを満たす。
向き合った二人は右へ左へ合わせて動き、ドレスの裾が揺らめいて後を追う。
踊る二人が顔を寄せ、離れ際に貴婦人がフワリとターンする。
支えた手を紳士が名残惜しそうに離すと、再び互いにお辞儀をして演奏も同時に終了した。
館主はレバーを戻しながら語る。
「これを工房に発注したご婦人は、毎日夕刻になるとネジを巻いて、懐かしむ様に踊る人形を見ていたそうです」
言いながら、人形のスカートのシワを直す。
「踊る二人に、ご婦人は何を重ねていたのでしょうか?」
一息だけ、最早帰らぬ問いの答えを待った館主は、次の展示へと歩を進める。