遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
過度な期待……僕は女性には期待していませんよ。その……僕が言う付き合い方とは……人として、と云う意味なんです
その……(と、顔をそらして腕を抱くように、歯切れの悪い声を漏らす)
僕は……
いえ、構いません
性悪説。そうですね。悪をもたらすのは人の弱さだと筍子は唱えた。だから人は信用できない。愚かしい魂は、脆弱な肉体に収められているのです。そんなもの。信じる方がどうかしている
存在しない人間の思考を読み取る事はできません。だが別の見方をすれば、貴方が認識する限り、時任彼方は存在するのです
この世界に存在する――していると我々が信じているものすら、僕たちの認識によってかたちづくられているのです。目の前の僕が斑鳩さんの作った幻ではないと、果てして断言できるのでしょうか?
それは誰にも出来ない。故に、時任彼方が存在していない確証もまた、無いのですよ
奈良ですか……矯正で治るものなのか。まさか時任彼方も?彼とどれくらい長いのかは存じませんが
ええ、僕は寝子島出身です。憂鬱な事に両親も住んでいる……この島は狭いから何時出会うとも知れない
(「そんな顔」という言葉にびくっと反応して斑鳩さんの方を向いて、泣きそうな怒ったような表情を向けて)
……にゃっ……!?
なっなんですかっ僕、そんな妙な表情していましたかっ……
んっんんっ……そんなって何ですかぁ、だってだって、仕方ないじゃないですかぁ、好きな人の事なんですから、必死になりますよーー!
(やけくそで上を向いて叫ばんばかりに)
……うう、失礼……
(涙目を拭いながら恥ずかしさと興奮で顔を真っ赤にして縮こまり)
……みなさんは……
恋したことないんですか……?・
(うるんだ目をちらりとのぞかせ、首を傾げて尋ねます)
うわあ、何恥ずかしい事を聞いているんだろう僕……
今のは聞かなかった事に……