遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(呉井さんの言葉に、そうなのか、少し驚いて)
そうだね。誰しも強いわけではないか。それでも前を向いて生きようとするきみは、僕にとってはまぶしいよ。そうやって、僕とは違うと決めつけてしまうのが僕の甘えなのだろうね
心地よさだけ与える行為はただの自己保身だと僕は思う。だからきみも気にしなくて構わない。人に影響を与えるのは、それだけ心情がこもっている証拠なのだから
(呉井さんのメールアドレスが書かれた紙を受け取り、戸惑ったように笑う)
あ、ありがとう……本気なんだな。では、また二人きりで話させて欲しい。その時は連絡するよ時間と覚悟が出来たなら
そう、帰るのか。ありがとう、それではまた
(呉井さんに軽く挨拶をして、去っていくのを見送り)
……あの雰囲気。僕の苦手な相手だ……
彼の事を知りたければ、僕の事もいつか腹を割って話さなければならないようだなあ……
(とため息をつく)
(赤潮さんがむすりとしたのに、あっと気がついて)
……あ……僕、そんな目つきでしたか?ごめんなさい……警戒心まるだしじゃないか……
(恥かしげに口を隠し、ちょっと顔を赤く染める)
女性から恋愛感情を持たれなくなるのなら、歓迎すべき事ですが。……って、好きな子って、そんな、何ですか?(表情を崩して赤面して、狼狽える)そ、そんな、じ、ジロジロ、見てるけど、べ、別に……そんな、だって、し、仕方ないじゃないですか……す、好きなんだし……っ……あ、でも、うっとおしいとか思われてるのかな……いつもいいよって言ってくれるからつい甘えちゃうんだよな……(俯いて考え込み、ぶつぶつ言い始める)
……へ?(自分の世界から戻ってきて、赤潮さんのドヤ顔と対面)
あ、ごめんなさい……なんでしたっけ?ナチュラルに……はあ、言われましても……その得意げな顔が、あなたの言う自然体なんですか……(冷たい目でじーっと見つめ)
僕は年は取りたくけれど、大人になりたくもあるし……
(じゃかまし!と言われ、慌てたように首を竦め)
うう……失礼しました。仮にも年上の方に……
(関西弁の語気に慣れていないので、凄く怒ったように思って少し怯えて半歩下がる)