遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
なるほど、君にはそう見えたのか
ならば誰のものでもあって誰のものでもない、と言うべきか。
俺が見つけた時にはすでにこの状態だったから弾いてみようとも思わなかったが、今まで多くの人に演奏されてきたんだろう
降り積もった不可視の記憶が鍵盤を重くしてるのかもしれない
……このピアノは人を選ぶのかもな
俺には弾く資格がないのかもしれない(冗談とも自嘲ともつかぬ笑みを浮かべ)
皆口君か。こちらこそよろしく(軽く会釈)
運命という言葉には懐疑的だが……ここにいる全員がピアノに導かれて集まったというのも面白い偶然だ