遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
魅入られて……か。お二人はどうして出会ったのです……?
責任。ならば言い逃れは出来ませんね。僕は責任を取るべきだ。僕は兄さんの吐きだす闇に耐えられない……それが僕の罰なのか……
時任さんのその言葉は、呪いだったんでしょうね……それ程までに貴方は……彼に……
(自分で言葉を並べながら、小首を傾げ、居心地の悪そうな顔をする)
……?
(その理由に気付いた顔をして、ああ、と思わず呟くが)
いえ、さすがにこれは……失礼です
分かっているのなら生きてください……僕以外の誰かが死をほのめかすなんて我慢出来ない。
弱音には感じませんでしたが。僕はそこまで割り切れませんし、諦められません。死ぬことも、生きることも。ただ心なんて無ければいいのに……そう思うことはあるけれど
……けれど……残り滓でも、何者でもない貴方でも、居なくなったら哀しいという人はいるのでしょう?
貴方に生きる目的は無くとも、死ぬ決断もしないのであれば、彼らのために延命していると、考えてもいいでしょう。
どうせ汚れたからもう要らない、そう思っているのでしょう?
(ハンカチで涙を拭きながら、ふて腐れて斑鳩さんを見る)
分からないん……ですか?本当に?
それならば、それが原因だ。
悪魔が人の魂を奪って何が悪い。それが生業なのだからしょうがない。結末が見えずに契約した訳ではないでしょう?
そうですね……時任彼方は、あながち不幸では無かったのかな……
僕は彼は苦痛から逃れるために死んだのだと思っていた……
けれど、永遠を手に入れるために死んだのであれば、それは彼にとっては……
人間すべてが、ではないようですよ。
すべて手に入らないのなら、何一つ手にはしたくない。僕だけの秘密が欲しい。それだけですよ
貴方にもそんなひとが……いるんだ
意外です
お仲間ですかね?でもどうだろう、思うだけなら誰にだってある。斑鳩さんは正常ですよ。まだ実行に移していないのだから。それに泣かせぐらいなら、まだ……
兄さんは僕の神だった。僕の両親や僕自身、世界中のすべての人間が醜く穢れていても、兄さんだけはそうではないと思いたかった。だからこそ貶めようとした。
でも、兄さんは……僕よりも傷つきやすかった。僕は兄さんの優しさと云う安全な籠の中で世界を嘲笑っていた……僕が泣き虫で、すぐ涙を流してしまうけれど、僕がこんなに泣けるのは兄さんが守ってくれたから。僕の魂が、穢されぬように