遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
きれいはきたない、きたないはきれい、か。
君はお兄さんを特別視していた。神聖視といってもいい。でもお兄さんも普通の人間だ。哀しければ涙し痛みを感じる平凡な人間……君を守らなければいけないからその素顔を押し込めていただけさ
歪みを許し合う、譲歩し合う、妥協し合う。相手との差異を受け入れる。言葉にするのは簡単だが実際はとても難しい、でも挑戦する価値はある。
実際君は君の好きな人物と許し合えてるじゃないか
既に一度できた事を今度はお兄さんに成せばいい。
事前に予告しておく……なるほど、そういう手もあるのか
無性愛者か……興味深い指摘だが、それとも少し違うと思う。自己分析だが。共通項があるのは認めるよ
交際相手と長続きしなくても遊ぶのは嫌いじゃない。どちらかといえば好きな方だ。没頭している間は余計な事を考えずにすむ。
……君のお兄さんも?……それは会ってみたいな。どんな人物か興味がある。ここには来ないだろうが……寝子島に住んでるならどこかでばったり会うかもしれないね
人に触られるのが怖い事実を恥じなくていい。俺だって苦手なモノはあるさ。
人間は完璧じゃない方が可愛げがある。苦手な事の一つ二つなければできすぎているだろう、君は
(「僕とは違う」という言葉に少し笑い)だろうね。だから面白い。
鏡と喋ってても退屈なだけ、君と俺は違う人間、だからこそ有意義な対話になる
(「こんな気持ちになったことがないからそんな事が言える」という批判を受け)
そんなことはないさ。
俺にだって気になる人くらいいる。
(動揺する従夢くんを穏やかに見守り、ゆるやかに首を振る)
別に慌てる事はないだろう。そんなに俺の笑顔が珍しいか?
……まあ、今みたいに自然に笑えたのは久しぶりだが。君があんまりうぶだからおかしくなった
楽に生きるか。……むずかしい注文だな。でも、そうだな。まわりを見倣って肩の力を抜くのも悪くない