遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(「不快にさせたら」と謝る斑鳩さんに首を振って)
いいえ。それが貴方です。僕は貴方が無意識の内に時任彼方に縛られているのを、知ってほしかっただけです。貴方が喪失した事によって、得たものものあります。時任彼方に出会う前はどうでしたか?
歪んでいない……僕はそれが気に入らなかった。同じように酷い目に遭っておきながらどうして……。その疑問は僕を苛つかせた。だから、僕は歪めたかった。しかし反応実験はことごとく失敗した。それもそうだ……初めから歪んでいたのなら
流されがち、だと思います。いつもふらふらしてますから。
いや、まあ、最近は……僕が脅迫まがいに懇願したおかげか、以前よりは気を付けてくれるようにはなったんですが……。
手遅れですよ。僕が。
ええ、斑鳩さんとお話するのは刺激になります。意地の悪いところもありますし。ただの理屈屋という訳でもなさそうです。
女性恐怖症の僕が言うのもおかしい話ですが、その淡白さが原因なのでは。僕だって女性と付き合った事はありますよ。軽蔑していた頃の方が女性の扱いはうまかったですよ。特に母のような女性の扱いは。彼女たち好みの装飾品を演じるのは本能みたいなものでした。
ほら、こんなふうに
(白くか細い首を傾け、淡く愛らしくも艶やかな笑みを作って見せた)
若かった……そういう事でしょうか。僕はまだ高校生ですから、何とも
(口を噤む斑鳩さんを見て冷たい目で、疑るように)まあ、それで経験が無い方が驚きますけど、ましてや、なのですね。貴方も、人に触れられるのが怖い……気持ち悪い?のかな
僕自身が最も意外です。自分で言っていて不気味ですよ。(げんなりした顔を見せて)
う~ん、そうでしょうか……?(眉をひそめてうーんと上を見て)
結局僕が一人で空回ってるだけの気がする……。最近、からかわれるし……。わざと無視したりして、僕が焦ってたら笑われて……そんなにぷるぷる堪える程面白いのかなぁ……僕本気にして泣いてしまうし、そしたら慌てて慰めてくれて……なんだかなー
(はっと、気づいて、顔を紅潮させて押し黙る)
……あ、いや…………すみません
やり直し……そうですね。僕は、まだ喪っていなかった
……斑鳩さん……あの……
ある植物学者の言葉です……
赦す事で過去は変わりませんが、未来は広がる
……だから斑鳩さん……
赦してください……ご自分を