遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
わかればいい(「誰だって見られたくないものがある」という発言に頷いて)
君の好きな人は随分無防備なんだね。なんでも受け入れてしまうのか……周囲に流されがちな人物か?
目を光らせて見張っていないとな
手遅れになったら困る
ユーモアのセンスはあるかな(小首を傾げ)
……自慢じゃないが、今まで女性と長続きした試しがない。
もって半年か一年、早くて三か月。自分じゃ後腐れなく上手くやってきたつもりだが、冷静に考えたら破綻している。
不安だと思っても言えなかったんだろう。当時は俺も受験と部活で忙しかったし……遠慮したのかもしれない。高校生の恋愛ではよくあることだ。お互い未熟だった……青過ぎたんだろうな。
彼女に恋愛感情をもっていたかはわからないが、好ましい人柄だとは感じていたよ。そうじゃなきゃ馴れ合いの延長でも付き合ったりしない。ましてや……(口を噤む)
そうだな、彼女には幸せな結婚をしてほしい。お互い過去を清算できた、会えてよかったよ
好きな人に笑ってほしいか……従夢君の口からそんな純粋な願いが出るとはね
いいんじゃないか、それで。シンプルな願望こそ一番強い欲望だ
君の好きな人は随分と無防備で無警戒らしいが、恋愛は必然的に変化をもたらすものさ
君と出会い交流する事で、その人物の中でも確実に何かが変わり始めている
おそらくは良い方向へ……自立心や判断力を養うのは大事さ。
君のお兄さんはまだ生きているんだろう?なら今からでも遅くない、お兄さんに優しくすればいい
やり直しはいくらでもきく。その機会が持てる君が正直羨ましいよ
君がお兄さんへの負い目を打ち消せたら、君を苦しませる呪いも消えるんじゃないか