遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(顔が赤くなった斑鳩さんを見て、申し訳なさそうに)
あ、すみません。そんなに気にされるだなんて。
誰にでも見られたくないものって、ありますものね……
そ、そうなのかな……
ぼ、僕無理させちゃってないかなあ……あのぼーっとしてるし、誰の要求も受け入れてしまうというか……
斑鳩さんは堅実そうには見えますね。理知的だし、ユーモアのセンスもある。討論の相手としては申し分ないですが、恋人としてはどうでしょうか。原因というか、そうですね。彼女も不安なら、思った段階でそう言えばいいのに。言わずに、貴方だけ攻めるのは虫が良いですね。貴方に原因があるとすれば、「彼女が本当に好きかどうか判断できなかった」事に尽きると思うのですが
しかし高校生の恋愛では、よくある事です。僕の周りでもそうだ。生憎その女性は結婚する予定ですし、斑鳩さんとの事もいい思い出……なのではないでしょうか。失敗しても双方に深い傷が残らなければ、それもいいい経験ですよ……
そういうものですか……僕にはまだ分かりません。
尽くす悦びだなんて……僕はただ……好きな人に笑っていて欲しいだけなんです。
押し付け……それは、そうかも……
(子供みたいに眉を下げて反省した顔)
僕は待ちます。いつまでも。あの人は自意識が薄いし、常識もないから。あまり大切にされてなかったみたいだし。もしかしたらそれで僕の事を好いていてくれるのかもしれないけれど、僕はあの人が自分で判断できるようなって、その結果僕を選ばなかったとしても、僕は構わない。
構わない……のだけれど、、、
どうしてその優しを、僕は兄に向けれらなかったんだろう……
だから僕は、あの人と一緒になるべきじゃない……そう思うんです