遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
我思う故に我あり、俺思う故に彼ありか。なんだか哲学的だな……
じゃあ、俺が忘れれば時任は天国へいけるのかもしれないな
……ああ、おかしいな。そんなもの信じてないと今さっき言ったばかりなのに。矛盾してる
俺の思う時任が幻なら、いま目の前にいる君も幻かもしれない
不眠気味の俺の妄想が生み出した幻覚だ。そうじゃないと証明するには…実際に触れてみたらいいのかな
(方言を矯正できるのかと聞かれ)
……ある程度は。自覚的にやればできない事もない。ただ気を抜くとうっかりでてしまう事はある。
時任に聞かれた寝言も……その、故郷の言葉で(居心地悪そうに俯く)
さんざんからかわれたな。
……ホンマええ性格しとった(当時を回想し忌々しげに顔を歪めてから、自分が口走った方言に気付いて)
……ご両親には会いたくないか?……まあ、そうだな。実家と疎遠なら気まずいかもな。何を話せばいいかわからない
発情期の猫みたいになってるぞ。言語中枢は正常か?
……恋?(唐突な質問にやや面喰い)驚いた、まさか君の口からそんな質問がでるとは
…一番近いのは高校の時に付き合った彼女かもしれない。ああ、でもアレは…告白されて、なしくずしに付き合い始めて…大学に上がると同時に別れた。彼女は地元に残ったからな。自然消滅に近い
俺の事はどうでもいい。皆口君の恋の話を聞かせてくれ。どうぞ、寂しい独り身にはご遠慮なく
(白衣のポケットに手を入れて聞く体勢に)