手に持った手榴弾の硬さ。
鼓膜を破きそうなほどの爆発音。
吹き上げる焔の熱さ。
人を焼く火薬の匂い。
体中に弾が刺さる衝撃。
それは実際に起きた事であって、けれども現実ではない。
他の人から見れば、空想の中でおきた出来事にすぎない。
それでもその空想に巻き込まれたものにとってはそれは確かに体験したことであり、
記憶の中に焼き付いてやすやすとは消えない。
ここ、九夜山にある秘密基地の屋根の上にいる高校生もそんな空想に巻き込まれた一人だ。
彼は弾が刺さった箇所をそっと撫でた後、その掌をじいっと見つめている。
空想の中の戦争は終わった。
当然のことながら、今は血などついているはずもない。
ましてやその手の中に手榴弾があるはずもない。
だが彼は現実ではない、それを確かめるように軽く手を握ったり開いたりしながら掌を見つめている。
「あーあ、俺何してんやろ…」
手を頭の後ろで組みながらボソリとつぶやき、彼はそのままごろりと寝転がる。
その辺の倒木などを組み合わせて作った急揃えの秘密基地だから当然寝心地は悪いはずだ。
だが彼は寝心地の悪さに構う様子はなく、ぼんやりと空を見つめている。
その空にはまるで彼の心を映したかのようにどんよりとした梅雨らしい分厚い雲が広がっている。
…人を守る仕事につきたくて。警官になりたいのに。
俺、確かにあん時人を殺したんやよな。
警官なれたとして。もしもの時はまたあんな風に人殺すんか、俺は?
それって俺のなりたい警官やないんちゃうやろうか?
おもむろに瞼を閉じる。
あとがき(PLより)
乱文失礼いたしました。
部活動のお時間です! ~運動部編~
空想サバイバル・バトル ~寝子島を奪還せよ~
の後日談にあたります。