タイトルは適当です。特に意味はないです。あと駄文です。
意味があると思って読んでると、多分頭の上に「?」が出ると思います。
そんなだったらタイトルつけるなとツッコミが入りそうですが、元ネタの「モーターサイクル・ダイアリーズ」が好きなのであえてタイトルつけました、すいません。あと駄文です。
それでもいいという方はどうぞ。
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ステレオから流れる『月光』の旋律に耳を傾けつつ、鳳翔皐月はベッドの上で大の字に身体を広げて、煙草のヤニで黄ばんだ天井をぼうっと見つめていた。
劇場の裏の裏にある皐月の自室には、本棚がいくつかあった。それには大抵、映画のDVDやブルーレイがずらりと並び、最上段左から最下段右まで、五十音順で規則正しく揃えてある。
しかし、整然としているのはその本棚だけだった。二つ目の本棚には画集が乱暴に押し込められており、三つ目の本棚に至っては、映画のパンフレットがこれでもかというほど詰め込んである。
部屋自体も綺麗とは言い難い。三脚型のイーゼルが一つ、真っ白なキャンバスを立て掛けたまま放置されている。その下には、画材と新聞紙の入った黒いボストンバックが投げ出されていた。
床に散らばっている紙切れは映画館のチケットの半券と、レシートだ。机の近くには水の入った二リットルのペットボトルと、スコッチ・ウィスキーのボトルが背比べするように並んでいる。
他にも、床に置いてあるものはあるが、上げれば切りがない。
「はぁ……」
そんな部屋の主である皐月は、その状態の部屋で長く過ごしてきたせいか、まったく気にもしていなかった。
ともかく、彼女にとって部屋の状態とは、息抜きが出来て寝る事が出来ればいいわけで、友人を招待するなどという目的に使う気はさらさらないのだ。
そもそも掃除自体が面倒であるし、劇場の清掃をやった後に自室の清掃という下位互換なんてやっていられるか、と言うのが本音だったりするが。
「なんかやる気起きねえなぁ……」
心地良い春の天候から、湿っぽくじめじめとした梅雨に入りかけの今日この頃。
シーサイドタウンの一角にあるミニシアター【リュミエール】は、いつも通り営業してはいるが、店主である皐月のモチベーションは下がりっぱなしだった。
絵もそうだったし、映画もそうだ。タバコにしてもライターにしても、仕事にしてもやるなら自分が好きなものと決めていて、ミニシアターの営業が予想以上に面倒くさいと実感しても、こうして廃業しないで続けている。
拘っているつもりはなかったが、もしかしたら私は拘りだけで生きてるのかもしれないな。
口の中に入ったタバコの葉をティッシュに吐き捨てつつ、皐月はそう思った。
好きな事には拘り、拘ることは嫌いにならない。基本的に人間はそういうものだと気づきはしたが、ここでそれを否定したらきっとモチベーションは更なる深みに達してしまいそうだったので、皐月はそう結論付けることにした。
一瞬、寝子高芸術科時代に自称空手の経験者相手に起こした暴力事件の時みたいに、誰かを散々蹴り飛ばしたいとか思いもしたが、ともかく拘りについての結論を出した。拘りならある。金が許す限りに拘りに拘りたい欲望は、いつも心にある。
「ああそういや、3Dメガネとか調達して3D上映してみっかって案、まだ本格的に考えてなかったな」
考えれば出てくる出てくる、変な拘り。
スクリーンにしても音響機器にしても、レトロライターにしてもタバコの銘柄にしても、灰皿のデザインやたまに飲むウィスキーの銘柄にも、皐月の持つ拘りはある。拘らない所はとことん拘りがないのは、目を瞑ろう。
その拘りをモチベーションに変換しようと皐月は考えた。そして、それは成功した。拘るには行動しなければならない。携帯の電話帳を開き、3D上映に関する情報を知ってそうな親友に電話を掛ける。まずミニシアターで3D上映ができるかというところから、話をしないといけない。
電話のコール音を聞きながら、皐月は3D映画の迫力に魅了される学生や社会人たちのことを考え、口元を緩めながら紫煙を吐く。
―――
なんだかんだ言って、やる気がなかったりする日もあるけれど、人のためになにかするのが皐月は好きなのだ。
二股かけられた親友の彼氏に金的をお見舞いして、先生が止めに入るまで蹴り続けたあの暴力事件もそうだったし、喧嘩は大抵の場合(※何時も、とは言えない)誰かのためにやってきた。
まあ、簡単な話だ。
怠惰で男っぽくて、映画好きで喫煙者のカフェイン中毒者は、自分が生きたいように生きているだけで、とてもフツウな人間なのだという、ただそれだけのことなのだから。