礼拝堂の中央には像があり、周囲は壮麗なステンドグラスに彩られている。
普段は大勢の人達が集まるこの場所だが、今日は人がまばらなようだ。
(顔を上げる。感情の薄い瞳が礼拝堂をぐるりと見回す)
……おや、冴来ではないですか。
何を祈っているんですか。何に祈っているんですか。
(ふと目に付いた級友の祈り。遮るように不躾に話しかける)
(偶然こちらを見ていた若菜と目が会う)
つえこに何か御用ですか。
御用の方は着信音の後にメッセージをおねがいしますよ。
(じ、と目を合わせたまま胡乱な問いを投げる)
祈りの場に美しいも醜いもないでしょうて。
それに教えを知らずともひとは祈るくらいしますよ。
きっと木組みのあばら家にもかみさまは宿るでしょう。
何のかみさまかは知りませんけどね。
(平坦な声。ムゲンの方も柳子の方も向かずに茫と虚空を見つめながら)