寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合｜リアクション

寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合

●魔法の音が降り注ぐ島で

「新しいレースゲームが出たらしいんだよ。
　都心部ではもう稼動してるだろうから、ネットでいろいろ下調べしてきたんだ」

　桜庭円は友人の北条冬華を先導して、店の中央に並べられた乗り込み型の大型筐体ゲームコーナーへ足を進める。

「私はこういうゲームは苦手だから、後ろから円さんの腕前を見せてもらいますわ。
　こういうのは見ているだけでも楽しいですからね」

　冬華もゲーム好きの円のテクニックはいかほどのものかと、期待に胸を膨らませる。
　店頭に貼ってあったポスターがその新作のＰＲだったのだろう。二人は苦労する事もなく、目的のレースゲームを見つけた。

　どうやら架空の南のリゾート島を周回するコースで順位やタイムを競い合うスタイルの様だ。太陽の降り注ぐ美しい海辺や極彩色の自然。異国情緒あふれる街並み、夜はライトアップされたビル街のコースなど、様々な趣向を凝らした背景も売りの一つらしい。

「さて、空いてる席を見つけたから早速やってみるよ」

　そう言いながら円はシートに腰を下ろし、ゲームプレイの準備を整えながら、下調べしておいた情報を思い出す。車種の特徴、コースの情報、ショートカットコース。早く出回っていた攻略動画までチェック済み。選ぶ操作系はミッション。オートマチックよりギアチェンジが円滑になると踏んでの選択だ。

「今までやったゲームと、それほど変わったところはないようだね。それじゃ始めるよ」

　そして投入口にコインを入れてゲームを始める……