仲良くなりたい｜リアクション

仲良くなりたい

☆島岡雪乃

　佐藤タカシは、今日も学校に来て席に座って授業を受けていた。
　休まないし、サボらないし、最初から最後までちゃんといる、模範的といえる真面目さ。
　しかし、タカシはしゃべらない。意思表示は首を縦か横に振って行い、口を開くのはどうしても必要なときだけ。
　担任の島岡雪乃先生はそんなタカシを心配して、授業で当てるようにしていた。
　必要最小限の答えだけで口をつぐむタカシに島岡先生は微笑みを向ける。
「ありがとう。今日も佐藤君の声が聞けてよかったです」
　不安を顔に出すまいと努めながら、島岡先生は思っている。
（真面目というよりは、目的ややりたい事が何もない感じなのよね……）
　それはタカシ自身もわかっている。
「高校生ってそういうもの」という指針に従って淡々とこなしている感じなのだ。

「放課後は忙しいです！　えーと、生徒会に顔出して、用事がなければ部活いって……今日はバイトは休みですね、でも家で夕食の支度を……」
　放課後、同じ１年１組の屋敷野梢は、廊下を走っている途中島岡先生に会った。
「あ、島岡先生、こんにちはー！」
　元気に挨拶してそのまま走り去る。
「あ、あの屋敷野さん……」
　島岡先生が何か言いかけた途端、梢は躓いて転びそうになる。
　はっ、と反応して助けようと走り出した島岡先生だが、梢はどうにか持ちこたえた。
　また走り出……そうとして、梢は足を止め振りかえって。
「あ……学内では走らないように！　先生もですよ！」
　島岡先生に向けてウィンクすると、早足で去っていった。
　ぽかんと見送りながら島岡先生は思う。
（屋敷野さん、大変ね……生徒会に部活に……優等生だからつい引き受けすぎてしまうのかしら）
　